新日本酒紀行「大七の七福おとそ」大七酒造は1752年創業 Photo by Daishichisyuzo

時を重ねて酒と生薬を調合!高貴な香りと甘みの極上お屠蘇

 年明けの朝、無病長寿を願って飲むお屠蘇は、邪気を屠(ほふ)り、魂を蘇らせるのが名の由来と伝わる。正月に飲む酒なら何でもお屠蘇と思ったら大間違いで、本来のお屠蘇は、本みりんまたは日本酒をブレンドし、生薬配合の屠蘇散を漬け込んだ薬草酒。願いを込めていただく年始の祝い酒だ。生薬には桂皮、山椒、生姜、陳皮(ちんぴ)など、体を温め、健胃作用のあるものが選ばれ、薬局によって調合は異なる。また、漬け込む酒で味わいは大いに変わる。伝統的な本みりんの原料は、餅米、米麹、焼酎の三つだけ。飲んでおいしい酒であることが重要だ。

 最高のお屠蘇を造るために酒質を一から設計したのが、大七酒造10代目の太田英晴さん。製造開始は2015年の春で、まず日本酒を搾った後の酒粕を蒸留し、焼酎を製造。3年間熟成させた後に、米麹と餅米を加えて一種の「本直し」、またの名「柳やなぎ蔭かげ」を造る。お屠蘇のために考案した濃厚な甘口酒だ。そこに、最高峰の生酛造り純米大吟醸雫原酒をブレンドし、芳醇な甘みのお屠蘇のベース酒を仕上げた。生薬は、奉納酒を醸す高野山から取り寄せ、7種を吟味。