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半導体ファウンドリ最大手の台湾TSMCが、ドイツに欧州初の工場を建設すると報じられた。戦略物資として重要性が高まる半導体の製造能力を高めるために、TSMCの工場を誘致できるか否かは、国際世論における主要国の発言力にかなりのインパクトを与える。そのため各国政府はTSMCの誘致戦略を強化。台湾から米国、わが国、そしてドイツへ、最先端型を中心とした半導体生産の地理的分散が加速し、半導体産業の構図はダイナミックに変化している。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)

台湾の半導体TSMCが欧州で初の生産拠点

 世界最大のファウンドリ(半導体の受託製造を行う企業)である台湾積体電路製造(TSMC)は、ドイツでの工場建設に向けて関係企業との最終調整段階にあるようだ。実現すれば、TSMCは欧州で初めての生産拠点を持つことになる。

 それは、世界の半導体産業の構図が、これまで以上のスピードで書き換えられていることを象徴する。世界各国にとって、戦略物資としての半導体の重要性は一段と高まっている。地理的だけでなく技術的にも、世界の半導体産業の構図はさらなる勢いで変化するものと予想される。

 わが国はそうした変化に確実に、かつ主要国の先を行くスピ―ドで対応しなければならない。官民の連携によって2022年に設立された半導体メーカー「Rapidus(ラピダス)」への期待は高まる。ラピダスは、次世代ロジック半導体の製造、さらにはファウンドリとしての成長を目指している。

 ラピダスの先行きに関してさまざまな指摘はある。楽観はできないが、わが国産業界の底力と海外の半導体関連企業の知見がうまく結合できれば、本邦半導体産業の再興は可能なはずだ。そのために関連する企業は、新しい取り組みをさらに強化しなければならない。政府は、民間企業のリスクテイクをサポートする政策をより迅速、かつ主要国に見劣りしない規模で打ち出していくべきだ。