絶頂トヨタの死角#13Photo:SOPA Images/gettyimages

デンソーは、台湾TSMCとソニーグループが国内に建設する半導体工場を運営する合弁会社に参画した。ただ、デンソー自身はTSMCとはほとんど取引がない。それにもかかわらず400億円もの出資をした背景には、筆頭株主のトヨタ自動車の置かれた厳しい状況がある。特集『絶頂トヨタの死角』の#13では、トヨタグループがTSMC・ソニー連合に合流した理由に迫った。(ダイヤモンド編集部 村井令二)

TSMC・ソニー連合に合流した
トヨタとデンソーの裏事情

「トヨタが動いた」

 2月15日、デンソーは、台湾TSCMとソニーグループの合弁会社に出資することを表明した。これによって熊本県に建設する半導体の新工場を運営する合弁に参画する。

 実はデンソーは、TSMCとはほとんど取引がない。それにもかかわらず、巨額の出資を決断したのである。

 その理由は複雑だ。まず挙げられる理由は、TSMCからの強い要請があったことだ。そもそもTSMCが日本に進出した大きな狙いの一つが、自動車産業との取引拡大にあった。既存の大口顧客であるソニーグループとの関係強化も大事だが、やはりトヨタグループとの取引拡大は魅力的だった。

 二つ目の理由が政府からの要請である。実は昨年の一時期まで、デンソーは日本政府の要請でTSMC誘致プロジェクトに参加し、ソニーと共にTSMCと合弁設立の枠組みを協議していた。

 ソニーは早々にTSMCへの出資を決めたが、デンソーはやや遅れての参加になった。これにより、TSMCの日本での工場運営はソニーとデンソーが支える日台連合の合弁の枠組みが完成したことになる。

 では、なぜデンソーは今になって「国策半導体」構想への参画を決めたのだろうか。その背景には、デンソーの筆頭株主であるトヨタ自動車と、それを取り巻くサプライヤー独特の事情がある。次ページではその裏事情を解き明かしていこう。