世界を動かすtsmc#4Photo:SOPA Images/gettyimages

半導体業界で最大の時価総額を誇る台湾TSMC(台湾積体電路製造)。世界のハイテク産業を支える黒子役であり、米中が取り合い、日本が求愛する「超モテ系」だ。このTSMCを生み出したのが創業者、張忠謀(モーリス・チャン)氏。彼は経営の最前線を退いた今でも、自社と半導体産業の未来について明確なビジョンを持っている。特集『世界を動かすTSMC』(全5回)の#4では、創業者の「1時間の激白」を詳報する。(ダイヤモンド編集部副編集長 杉本りうこ)

TSMCが唯一恐れる
企業の名前とは?

 TSMC(台湾積体電路製造)は台湾では近年、「護国神山」と呼ばれている。文字通り国を守る神の山という意味で、経済成長や技術水準を支えるだけでなく、外交上の切り札ともなって国を守っていると認識されている。このTSMCを創業した張忠謀(モーリス・チャン)氏は、ゴッドファーザーと呼ぶにふさわしい大物実業家だ。

 張氏は中国浙江省出身だが、学術とビジネスのキャリアは主に米国で積んだ。半導体産業が勃興する時期の米国で、産業のダイナミズムを吸収した張氏は、台湾政府に請われてTSMCの創業に至る。そのビジネスモデルは、「顧客の注文に応じて半導体を生産する」という、いわば製造業をサービス業に変えるもの。設計から製造まで一つの企業の中で手掛けるという、それまでの業界の標準モデルを大きく変えた。

 2018年にTSMCのCEO(最高経営責任者)を退いた後、張氏がメディアの前に姿を表すことはめっきりと減った。その張氏が1時間にわたり、TSMCと産業の未来を語る機会があった。