経済的に恵まれない母子家庭に育ち、高校・大学は奨学金を借りて卒業。そのため、1000万円に迫る“奨学金という名の借金”を背負うことになった。そこで、郷里に母を残して上京、東京国税局の国税専門官となった。配属を希望したのは、相続税調査部門。「どうすればお金に悩まされずに済むのだろう?」と考え「富裕層のことを知れば、なにかしらの答えを得られるのではないか?」と思い至ったからだった。国税職員のなかでも富裕層が相手となる相続税を担当するのは、たった1割ほど。情報が表に出てくることはほとんどない。10年ほど携わった相続税調査で、日本トップクラスの“富裕層のリアル”に触れた『元国税専門官がこっそり教える あなたの隣の億万長者』(ダイヤモンド社)の著者が、富裕層に学んだ一生お金に困らない29の習慣を初公開する!
億単位の財産が貯まったワケ
【前回】からの続き 「電話を折り返してください」――都内の税務署に若手職員として勤務していた私は、相続税について相談したいという女性から、たびたび電話を受けていました。その女性は、いつも名前と電話番号を私に告げるや否や折り返しを求めて電話を切るのです。
最初に相談を受けて話を聞いたとき、ざっと計算しただけで、その女性は数億円単位の財産を相続しており、確実に相続税の申告が必要であることがわかりました。そのことを説明してから、たびたび電話で疑問点を尋ねてくるようになったのですが、そのたびに折り返しの電話を求めてきたわけです。
ある日、その女性との長電話を終えた私は、近くの席にいた50代のベテランの先輩に、「億単位の財産を相続しても、電話代が惜しいんですかね」と、ついこぼしてしまいました。するとその先輩は、「コバちゃん、わかってないね。そういう奥さんがいたから、億単位の財産が貯まったんだよ」と笑い飛ばしたのです。
億万長者の質素な暮らしぶりに驚く
まだ新人だった私にはピンときませんでしたが、数十年にわたって相続税調査を経験した先輩にとって、お金持ちの人が折り返し電話を求めることは、けっして不思議なことではなかったのです。
相続税調査をはじめて経験したときも、富裕層の質素な生活ぶりにたびたび驚かされました。当時の私にとって、富裕層の生活など“未知の世界”です。私が育ったのは福岡県北九州市の市営団地が建ち並ぶエリアで、周囲にお金持ちはいませんでした。
あっさりと期待を裏切られる
私にとってお金持ちのイメージといえば、漫画やアニメで見た『おぼっちゃまくん』の世界観です。家には執事やお手伝いさんがいて、欲しいものはなんでも買ってもらえる。そんな自分とは別世界の人々だとしか想像できなかったのです。
はじめての相続税調査で富裕層の自宅を訪問するまでは、「億万長者だから、きっと派手な生活をしているだろう」と、不謹慎ながら豪勢な生活ぶりに触れることにワクワクしていたのですが、実際に調査に入ると、その期待はあっさりと裏切られました。拍子抜けするほど、普通の暮らしぶりだったのです。【次回に続く】
※本稿は、『元国税専門官がこっそり教える あなたの隣の億万長者』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。