開成、麻布、桜蔭、雙葉、筑駒、渋幕……東京・吉祥寺を中心に都内に展開する進学塾VAMOSは、「入塾テストなし・先着順」で生徒を選抜しないが、「普通の子ども」を有名難関校に続々と合格させると話題の塾だ。子どもの特徴を最大限に生かして学力を伸ばす「ロジカルで科学的な学習法」が、圧倒的な支持を集めている。本稿では、VAMOSの代表である富永雄輔氏の最新刊『ひとりっ子の学力の伸ばし方』(ダイヤモンド社)から、特別に一部を抜粋して紹介する。

子どもの集中力を伸ばすために「親ができること、やってはいけないこと」Photo: Adobe Stock

「一人で過ごす時間」をつくる

 繰り返し述べますが、ひとりっ子は有利です。本人が興味があることに没頭する時間を確保したとしても、兄弟姉妹がいれば、物理的に難しい事態が多発します。その時間に誰かが騒いでいるかもしれないし、場所だって奪われてしまうかもしれません。

 その点、ひとりっ子なら邪魔は入りません。これはものすごいアドバンテージであって、この利点を最大限に活用すべきです。

 ところが、ひとりっ子の親は、ともすると「ひとりっ子で寂しい思いをさせている」というおかしな罪悪感を持ちます。そして、なるべく子どもが一人で過ごす時間を減らそうとするのです。

 しかも、かけられるお金が多いので、習い事などのスケジュールも次から次へとびっしり入れがちです。すると、ひとりっ子は親の言うことをよく聞くので、そのスケジュールも守ります。それによって、子どもが好きなことに集中し、独創性を磨くチャンスが失われてしまうわけです。

 ひとりっ子は、独り言もよく言います。VAMOSにも、ブツブツ言っているひとりっ子がいます。それに気づいた親の多くが「変な子になっちゃった」というネガティブな評価をしますが、とんでもない間違いです。独り言の多さは、蓄えた知識を整理している証拠で、子どもの独創性が伸びる瞬間です。

 親世代は人形を使っての「ごっこ遊び」をしたと思います。そのときに、いろいろセリフを言い合いましたね。今の子どもはごっこ遊びこそしなくても、そういう架空の言葉や感情のやりとりをする感性は持っています。

 ひとりっ子は、自分の中でそうした世界を組み立て、一人で何人もの立場になり、それぞれの思いを発しているわけです。そうしたクリエイティビティが独り言という形で表出しているのだから、潰すようなことをしてはなりません。

子どもが没頭できる場所を見つける

 ひとりっ子が好きなことに没頭する場は、どこでもかまいません。階段に腰掛けて夢中で本を読んでいるなら、それもいいでしょう。もしかしたら、その階段は子どもにとってとても居心地がいい場なのかもしれません。

 女の子の場合、自己管理ができるので自室にこもっていても大丈夫ですが、男の子は、さりげなく親の目が届くところがいいでしょう。

 一番のおすすめはリビングです。リビングに両親や祖父母という大人がいたとしても、兄弟姉妹のような邪魔はしません。子どもはそれをわかっているから、安心して好きなことに没頭できるでしょう。

 子どもがなにかに集中しているそばで、親が資料を広げて仕事をしたり、読書をしたりというのもおすすめです。

 大人たちに混ざって自分も一生懸命やっているという思いは、非認知能力の一つである自己肯定感を高めると同時に、親への信頼感や連帯感を育むはずです。自己肯定感については後ほど詳述しますが、中学受験で他者と競争しているうちに、どうしても低くなりがちですので、高めてあげられるチャンスをできるだけ増やしましょう。

(本稿は、『ひとりっ子の学力の伸ばし方』からの抜粋・編集したものです)