インフレに楽観的すぎる? 投資家は油断禁物Photo:Bloomberg/gettyimages

――筆者のジェームズ・マッキントッシュはWSJ市場担当シニアコラムニスト

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 1974年12月、著名な歴史学者で、米大統領のスピーチライターを何度か務めたアーサー・M・シュレシンジャー・ジュニア氏は、現代の経済予測の問題点を、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)に掲載された非常に長い一文に要約した。「ほとんどの経済学者、ビジネスマン、政府当局者はこの瞬間までかたくなに、インフレーションは現代資本主義の構造的脆弱(ぜいじゃく)性ではなく、むしろ同時発生した不運による偶発的結果であり、その緩和に必要なのは忍耐と時間(および失業)だけだと考えている」

 仮にシュレシンジャー氏が存命で、いま何か執筆したとしても、これ以上うまくは表現できなかっただろう。主流の金融世界の考え方では、インフレは一時的な現象であり、連邦準備制度理事会(FRB)が利上げの処方箋を速やかに出すことで治るものだという基本的な前提がある。だが、1974年当時と同様にシュレシンジャー氏の考えは今も正しく、現在の資本主義に対するインフレ圧力は持続する、と考えるべき根拠は十分にある。

 同時発生した不運が全くないわけではない。1974年当時インフレが加速したのは、何年も続いた低すぎる金利とアラブ諸国の石油禁輸によるエネルギー価格高騰が重なったためだ。一方、過去2年のインフレ高進は超低金利のほか、新型コロナウイルス流行が引き起こしたサプライチェーン(供給網)のひっ迫、ロシアのウクライナ侵攻に起因するエネルギー価格高騰が重なったことで生じた。1974年と同様、こうした一時的な要因はやがて過ぎ去るだろう。足元のインフレ率低下からは、その多くが既に過ぎ去ったことがうかがえる。だが1974年に続く時期と同様、深く根ざした構造的脆弱性により、インフレはこの先何年も問題となり続ける可能性がある。