自衛隊を縛るドローン規制の時代錯誤「自撮り棒にカメラを付けて走った方が速い」2018年に北海道厚真町の土砂災害現場で、ドローンを操縦する陸上自衛隊員らの写真。1台のドローンを飛ばすのに複数の隊員が協力し、ドローン本体を目視をする係の隊員もいる Photo:JIJI

ドローンの本格導入にかじを切り始めた自衛隊だが、厳しい規制によって有事でもまともに飛ばせないのが実情だ。「飛距離が海外製と比べて20分の1」「ドローン本体を目視しての操縦を強いられる」「ドローンが操縦不能になる場合がある」など、問題が山積している。(明治大学POLARIS研究員 ヒラタトモヨシ)

世界でもまれな厳しいドローン規制が
自衛隊にまで及んでいる

 ウクライナ戦争を契機として、防衛省・自衛隊はドローン導入へとかじを切り始めた。だが、自衛隊のドローンの利用には、有事の際でも民間人と同じ規制の下での運用が強いられるなど、世界でもまれに見る厳しい規制が敷かれている。これは部谷直亮氏が執筆した『自衛隊がドローンを本格導入、なのに「有事でも自由に飛ばせない」理由』でも触れられているところだ。

 上記の記事は警察庁が管轄する小型無人機等飛行禁止法というドローンの飛行に関する規制が自衛隊のドローン活用を妨げる問題を指摘している。本記事で取り上げるのはこれとは別、総務省の管轄する“ある規制”である。

 この規制によって、何が起こるかといえば、防衛や災害対応を担う自衛隊のドローンが、有事でも数百mしか飛ばせない、あるいはドローンが操縦不能になり墜落の危機にさらされる、ドローン本体を目視しての操縦を強いられる、などだ。複数の現役陸上自衛官がこれを証言している。

 このような実態があるにもかかわらず、なぜ広く話題にも問題にもならなかったのか。これまで自衛隊のドローン運用に関する一部の専門家の過去のコメントを拾う限り、どうやら自衛隊もウクライナ軍と同じような運用ができる、自衛隊は遅れていないと思い込んでいた節がある。

 その言説が多くの人に広まったことが、人々の無関心さにつながった可能性は否定できない。恐らく兵器の専門家といえども、民生用ドローンの知識はカタログ程度で、操縦の経験も少ない、あるいは経験がないことから、規制とその影響を考慮できなかったと思われる。彼らは自衛隊が外部向けに広報の一環として示すドローンを飛ばす姿だけを見て「やってる」と判断していたのだ。

 だが、実態は「数百mの距離であれば、ドローンを飛ばすより自撮り棒にカメラを付けて走った方が速い!」と現役の陸上自衛官に言わしめるほど、がんじがらめに規制し、自衛官の身動きを取れなくしている。

 では、この規制の正体は何なのか。