給与水準や福利厚生、やりがいなどで仕事を選ぶ人が多いだろうが、「本当に人生を幸せに過ごす」ために最も重視すべき条件はいったい何だろうか?
そのヒントになるのが、世界累計で200万部を突破した大ベストセラーの邦訳版『サイコロジー・オブ・マネー 一生お金に困らない「富」のマインドセット』だ。経済的自由と人生の幸福を勝ち取る方法を「人間心理」の側面から教えてくれる本書より、一部を抜粋・編集して、「給料が高いから」という理由で仕事を選んだ人の“悲惨な末路”をご紹介する。
お金さえあれば幸せになれると信じていた
私は大学時代、投資銀行で働きたかった。理由はただ1つ、どの業界よりも給料が良かったから。それが唯一の動機だった。当時の私は、お金さえ手に入れば幸せになれると100%信じて疑わなかった。
大学3年生のとき、ロサンゼルスの投資銀行で夏季のインターンシップをする機会を得た。初日の時点で、投資銀行で働く人がなぜ高収入かがわかった。それは、たいていの人にはまず耐えられないほどの激務だった。社内には、「土曜に出社しない者は、日曜には居場所がないと思え」という言い習わしすらあった。
悲惨な末路=自分の時間を奪われ続け、メンタルが崩壊
仕事は好奇心をそそるもので、給料も良く、自分が重要な人間になったように感じさせてくれるものだった。だが、起きているあいだは、上司の奴隷となって自分の時間を捧げなければならない。
それまでの私の人生で、これほど惨めな経験はなかった。インターンシップは4カ月間の予定だったが、私は1カ月しかもたなかった。
何よりも辛かったのは、この会社での仕事そのものは好きだったことだ。しかし、自分でコントロールできないスケジュールに従ってまで好きなことをするのは、嫌いなことをしているのと同じだった。
「給料の高さ」で仕事を選んでも、幸せは勝ち取れない
この感覚には名前がある。心理学では、これを「心理的リアクタンス」と呼んでいる。ペンシルバニア大学でマーケティングを教えるジョナ・バーガーは、これを次のように的確に説明している。
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人は、自分が主導権を握っていると感じたいのである。つまり、運転席に座りたいと思っている。だから、誰かから何かをするように仕向けられると、急に無力感を覚える。
自分で選択したのではなく、他の誰かに指示されたと感じるからだ。そのため、その行動そのものは好きだとしても、拒絶したり、他の行動を取ろうとしたりする。
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「時間を好きに使えるか」が幸福度を左右する
この考えが腑に落ちた人なら、好きなときに、好きな人と、好きな場所で、好きなことを好きなだけできる人生を過ごすためにお金を蓄えることが、とてつもないリターンを生み出すという意味がわかるはずだ。
一昔前に比べて、現代人は自分の時間をコントロールできなくなっている。そして時間を好きに使えないことは、幸福度に大きな影響を与える。だから、かつてないほど豊かになった人々が、あまり幸せを感じていないのも無理はない。
(本稿は、『サイコロジー・オブ・マネー 一生お金に困らない「富」のマインドセット』より一部を抜粋・編集したものです)