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カレンダー、ToDoリスト、イフゼンプランニングなどの時間術は、誰にでも効果的なわけではない。人によって効果のある時間管理術が異なるからだ。長年誤解され続けてきた「時間」の正体を探ることから始めると、最適な時間管理術が見つかる。カレンダーやToDoリストが効く人の特徴は? 鈴木祐『YOUR TIME ユア・タイム 4063の科学データで導き出した、あなたの人生を変える最後の時間術』(河出書房新社)から一部抜粋・編集して紹介する。
そもそも、私たちが感じる「時間」の正体とは?
人間の脳は、過去と未来の変化率を高速で計算し続けており、そのプロセスを、私たちは時間が流れる感覚として体験します。映画館で秒間48コマの静止画を続けざまに観ることで、ひとつなぎの動きを感じられるのに似た現象です。
脳が持つ確率の計算機能を考慮すると、私たちが感じる過去と未来は、こう表現できます。
・未来=いまの状態の次に起きる確率が高い変化を、脳が「予期」したもの
・過去=いまの状態の前に発生した確率が高い変化を、脳が「想起」したもの
たとえば、ビル解体の専門業者が巨大なビルを解体し、そのあとに瓦礫の山ができあがったとしましょう。
瓦礫の山を見たあなたの脳は、はじめに記憶のデータベースにアクセスし、「似たような瓦礫の記憶はないか?」と検索を開始。これで引き出された記憶をもとに確率の計算を行い、「これは解体作業によってできた瓦礫だろう」といった過去を生み出します。この作業が「想起」です。
さらに、あなたの脳は、続けて想起の結果をもとに次に起きそうな出来事の確率を計算しはじめ、最後には「誰かが片づけない限り瓦礫はこのままだろう」のような未来を作り出します。この作業が「予期」 です。
以上の議論をふまえれば、もはや答えは明確でしょう。そもそも私たちは、過去から未来へ続く時の流れなど体感していません。
アウグスティヌスの指摘どおり、人間が認識できるのは今の変化だけであり、そこにあなたが「時間」の概念をあとから当てはめただけなのです。そう考えると、アウグスティヌスが示した「時間=意識の錯覚」という説も、アリストテレスによる「時間=変化の数」との考え方も、根本は正しかったと言えます。
そして、ここにおいて私たちは、本章のゴールである「時間管理のシンプルなフレームワーク」にたどりつきました。それは、次のようになります。
・正しい時間術とは、あなたの「予期と想起」を調整するものである
私たちは、世界のあらゆる変化を「予期と想起」の2軸で受け止め、それを主観的な時間の流れとして解釈しています。さらに、客観的な時間の管理には限界があるのだから、あとは私たちの意識の内側における時間、すなわち「予期と想起」を調整していくしかありません。
定番の時間術が効く人、効かない人
とはいえ、いきなり「予期と想起で時間を管理せよ」と言われても、とまどってしまう人が大半でしょう。この考え方が、いったいどのように時間の管理に役立つのかは、まだ見えてこないはずです。
そこでここからは、「予期と想起」のフレームワークを使って、従来の時間術をいくつか再解釈してみます。カレンダーやToDoリストといった定番のテクニックを「予期と想起」の視点からとらえ直し、それぞれの手法が効きやすい人と効きづらい人の違いを考えていくわけです。
これにより「予期と想起」への理解が進み、ひいては時間術の効果に関わる個体差の正体もクリアになるでしょう。
なぜカレンダーが効く人と効かない人がいるのか?
まずはカレンダーの効能を検証してみましょう。
予定をカレンダーに書き込むのは時間術の基本ですが、実際にはそこそこしかパフォーマンスが改善しないのは序章で説明したとおりです。この現象は、予期と想起の視点からどう位置づけられるでしょうか?
結論から言えば、カレンダーでパフォーマンスが改善しやすいのは、「予期の現実感が薄い人」です。
くり返しになりますが、予期とはこれから起きる変化の見込みを計算したものであり、天気予報の降水確率よろしく、あなたの脳内に将来のおおまかなメンタルモデルを描き出します。「60%の確率で来月に精算書を書いているだろう自分」や「90%の確率で明日に部屋の掃除をする自分」といった具合です。







