クロマグロは漁獲制限の対象になっていて、漁業者はその枠内でしかとってはいけない。国が大枠を決めて配分するが、天下り先を優遇しているという批判もある。売って換金することも可能で、収入に直結するだけに配分を誤れば争いを生む。昨秋放映のドラマ「ファーストペンギン!」では、農林水産省の官僚が古いしきたりにとらわれる漁業の改革に挑む漁師を応援する姿も描かれていたが、現実はそう甘くはない。(経済ジャーナリスト 樫原弘志)
おカネに化けるクロマグロの漁獲量
天下り団体優遇も?
国が漁獲可能量(TAC)を決めている太平洋クロマグロの漁獲枠、つまりマグロを獲る権利は売り買いの対象になる。水産庁は漁業者同士の枠の有償トレードを推奨こそしないものの、禁じていないからだ。
最高ブランド「大間まぐろ」の産地・青森県大間町では漁師ごとの枠が相対で取引され、値段が1キログラムあたり4000円から5000円程度に高騰する時期もあるという。国から県、県から地元漁協を通じて無償で割り振られた枠を売るだけで所得になるわけだ。
収入に直結するため枠の配分をめぐる争いは尽きない。2022年から漁船ごとのクロマグロ漁獲割当(IQ)まで国が決めるようになった近海はえ縄漁業では、一部の漁船団がIQの配分方法は新規参入者を差別する措置だとして国を相手に訴訟を起こしている。
水産庁元幹部らの天下り先である大中型まき網漁業団体を優遇しすぎて、沿岸の釣り漁師やはえ縄、定置網の漁業者がしわ寄せを受けているという疑念や不満が全国各地で渦巻いている。