大間マグロ写真はイメージです Photo:PIXTA

業者が発行する「産地証明書」は安易に信用してはいけない――。それが、熊本県産アサリ産地偽装問題の教訓である。大手スーパーや外食チェーンは食材の納入業者に産地証明書の提出を求めるが、証明書自体の信頼が揺らいでいる。しっかりした裏付けのない産地証明書は紙切れにすぎず、当てにし過ぎると思わぬ落とし穴にはまってしまうかもしれない。(経済ジャーナリスト 樫原弘志)

出荷業者が発行する「産地証明書」は
どこまで信用できるのか

 手元に2021年8月のある日、青森県大間町の水産会社が発行した大間産クロマグロ(以下マグロ)の産地証明書の写しがある。宛先は静岡市中央卸売市場の卸会社だ。そこにはこう書かれている。

「貴社に対して販売しました黒マグロは、津軽海峡大間沖にて水揚げされました大間産マグロであることを証明いたします」

 水揚げ日、漁船名、漁業者氏名、重量、漁法、そして最後に出荷者であるその水産会社の名前と代表者の氏名を記して会社印を押している。

水産会社が発行した大間産クロマグロの産地証明書(写し)水産会社が発行した大間産クロマグロの産地証明書(写し) 拡大画像表示

 大間には漁業協同組合以外にマグロを出荷する民間業者が数社ある。その全てを確認したわけではないが、複数の業者のものを見たところ、書式は異なるものの、出荷したマグロが「大間沖」で獲れたことを証明するという内容は共通している。

 わざわざ産地を証明する書類が必要とされるのは、大間のマグロは他の産地のマグロよりも高い値段で取引されるのが通例であり、産地偽装に悪用されるリスクがあるからだ。