漁業者と大間漁協職員たち大間漁協は年末年始、豊洲市場へのクロマグロの出荷準備に忙殺された

青森県は大間産クロマグロの漁獲未報告の疑いで2021年12月23日、JF大間漁協に漁業者を個別に呼び出し、事情聴取した。たくさんの業者が集荷を競う大間では、漁協とはいえ漁獲の実態をつかみ切れていない。大間沖での漁獲をうたう漁協の商標「大間まぐろ」も漁場や水揚げの実態と大きくずれていて、監視を怠ったり、運用を誤ったりすると、産地偽装を助長しかねない危うさを秘めている。(経済ジャーナリスト 樫原弘志)

クリスマス前、青森県から
無実の漁業者も呼び出し受ける

 豊洲市場の初セリ最高値の常連、青森県大間産のクロマグロの最高ブランドにふさわしい漁獲管理を徹底できているのだろうか?2021年秋に表面化した漁獲未報告問題を調べていくと、一獲千金の夢を追うあまり一部の漁業者たちがコンプライアンスそっちのけで操業し、監督官庁や漁協が暴走を止め切れない実情が浮かび上がる。ヤミ漁獲は産地偽装のリスクと隣合わせでもある。ブランドの力にあぐらをかくような一部の人たちによるルール違反を一掃できなければ、地域団体商標「大間まぐろ」を普及させてきた先人たちの苦労は台無しになる。日本の水産資源管理への信頼を揺るがすことにもなりかねない。

 21年12月23日、青森県水産振興課はクロマグロを漁協以外の業者から出荷している漁業者らをJF大間漁業協同組合に呼び出し、個別に事情聴取した。法律で義務付けられているクロマグロの漁獲報告を怠っていないか、疑わしい取引データを示しながら漁業者に説明を求めた。

 水産庁も青森県も「個別の事案に関してはコメントできない」として説明を拒んでいるが、この事情聴取には水産庁の職員も立ち会っていたという情報もある。クロマグロを出荷した日付や数量を示され、言い逃れできずに渋々未報告を認めた漁業者もいれば、提出書類の再確認を求めて無実を証明できた人、未報告分がばれずに安心して帰宅した人もいるようだ。

 漁協以外の出荷業者に販売を委託するいわゆる「脇売り」の利用者に限定して呼び出したのは、脇売りを取り締まるためではない。独自の販売ルートを持つ民間業者の利用には問題ない。漁協への販売委託手数料に業者指定の手数料2%程度を上乗せするのは漁協より販売上手だからだ。

 問題になるのは漁業者が脇売りを漁獲報告逃れに悪用するケースだ。情報公開請求で入手した卸売市場への出荷データなどから漁獲報告の闇を解き明かしてみよう。