2 短期と中期―15の打つべき手

 有事における経営の緊急対策は「短期」と「中期」に分かれる。「悲観的に準備して楽観的に行動する」ことを大原則に、冷静な現状認識と的確な価値判断基準、そして今やるべきことを決断し、リーダーシップを発揮してスピーディーに取り組むことが大切である。これを踏まえ、次に具体的な短期対策(7項目)と中期対策(8項目)について打つべき手の解説を行う。

(1)短期対策――経営を止めない、経済を止めない
(1)資金繰り対策……3~6カ月先の資金繰りに要注意
(2)金融機関との関係強化……メインバンクを明確にした資金手当て
(3)全天候型の業績シミュレーション……雨に備え、今に集中せよ
(4)サプライチェーンシフト……供給と物流網の再構築
(5)人材資源の適正シフト……総動員の最適配置で難局を乗り切れ
(6)BEP(損益分岐点)経営……あらゆる生産性を抜本的に革新する
(7)政府や自治体からの助成金・補助金・法律改正など……すべての支援を活用せよ

⑵中期対策―未来投資を決断せよ
(1)BCP・サステナブル投資……守りを攻めに転換する戦略
(2)キャッシュ、キャッシュ、キャッシュ……手元資金計画の策定
(3)リスク分散投資……卵を一つの籠に盛らない
(4)DX投資……デジタルリーダーシップを発揮せよ
(5)デジタルマーケティング投資……顧客課題にフォーカスする
(6)ブランディング投資(インナー&アウター)……会社の存在価値を高めよ
(7)M&Aと事業承継……企業価値へ投資せよ
(8)中期ビジョン再策定……「強み」に経営資源を重点投下せよ

 これからの企業は想定外のショックを前提に経営を行う必要がある。とはいえ、ピンチのときこそ知恵の出しどころである。有事の経営は「逆張りの経営」であり、ピンチをチャンスと捉え、「短期対策と中期対策」の観点から経営を総点検してほしい。