⑴ステップ1「再建」――やめることを決める

 ステップ1は、当然であるが「生き残る」ことである。まず生き残らなければ先に進めない。そのために財務力を駆使して、生き残るための施策を大胆に導き、優先順位をつけて実行していく。

 この段階では、「血を流す」ことも覚悟しなければならない。すなわち、財務リストラ、組織リストラ、事業リストラの断行であり、心を鬼にして取り組む必要がある。危機に瀕した企業が無血で生き残れるほど、現在の経営環境は甘くない。「何をやめるか」を逡巡すると先へ進めないのである。貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書を隅から隅まで眺め、生き残るための手を打つことだ

「財務力」アプローチが重要になる。

⑵ステップ2「再生」――集中すべき経営資源を決める

 ステップ2では「事業力」が求められる。まさに再生本番である。ステップ1で実施したリストラの断行だけでは「負け組」のままである。これで“再生完了”の宣言はできない。ステップ1の撤退戦略で残った事業へ、限りある経営資源をどのように集中投下するか。「事業力の強化」が鍵となる。企業再生は、このステップまである程度の絵を描いて取り組むべきである。逆にいえば、自社の新しい姿を明確にしたからこそ、ステップ1の撤退戦略やステップ2の経営資源集中も決断できる。

⑶ステップ3「成長」――キャッシュフローを持続的に生み出す経営体質をつくる

 ステップ3は「ターンアラウンド」をキーワードに、自立型企業へと体質転換していくことだ(ターンアラウンドには「方向転換」の意味がある)。事業力にさらなる磨きをかけ、再び負け組に戻ることのない成長軌道を確保することだ。これこそが企業再生の最終目標でなければならない。

 そのためにも、ステップ2で集中化を進めた事業の軸足を成長分野へと少しずつ移し、アライアンス(他社との業務提携)なども含めた成長戦略に道筋をつける。また、成長戦略を推進する「組織力の構築」も重要となる。組織力の後押しがあって、初めて安定収益力のある成長戦略が実現する。

 これが「三ポイント(財務・事業・組織)&三ステップ(再建・再生・成長)アプローチ」による企業再生手法である。

 以前までの企業再生手法は、バランスシート(貸借対照表)の修復を目指した縮小均衡型だった。しかし、これからはキャッシュフローを再生し、持続的に成長が可能な企業体質をつくることが重要となる。減収・赤字企業はいち早く事業ポートフォリオの再構築や生産性改革、また収益構造改革などを骨子としたキャッシュフロー再生を実現していく必要がある。