山口県から全国へ。そして、海の未来に思うこと。

 今、私は日本の漁業そのものを変えたいと本気で思っている。

 どうすればもっと効率良くできるのか。どうすれば漁師が安定して生活できる仕組みを確立できるのか。乗り越えなければならない課題は制度の話だけではない。

 コロナ禍の現在、海水中でも「ウイルス」が蔓延しているのをご存じだろうか。

 実は海のなかでは海産物の大量死が起きている。例えば、去年からアジの動きが明らかにおかしい。これまでタイしか食べなかった有毒な巻き貝を、アジが食べるようになった。この貝を食べると胃袋のなかで腐敗し、それが原因でアジは死んでしまう。これは歴史上初めての観測だという。

 海そのものの免疫力が落ちている、と言えばイメージしてもらえるだろうか。あまり大きな声では言いたくないが、自分たちがどれだけ努力しても、このままでは日本の漁業が終わる日はそう遠くないと考えざるを得ない。早ければ2030年に漁業はビジネスとして成立しなくなると語る関係者もいる。

 海の汚染も深刻な問題だ。これは牛や豚、鶏などの家畜の糞尿が一因とも言われている。一部は肥料にしているが、発酵には時間がかかって非効率的なため、肥料にならないぶんは海に流してしまっているという。海の生物より海中のごみの量のほうが増加スピードが速く、いずれは逆転するという話も聞く。想像を絶する勢いで環境破壊が起きている気がしてならない。

 この海の危機に立ち向かうには、漁業関係者の理解と連携が不可欠だ。目先のメリットやデメリットを気にして、不毛な喧嘩をしている場合ではない。(中略)

 今起きていることは、まさに地球規模の海の危機だ。われわれだけでは、いくら頑張っても現状は変えられない。少しでも海の汚染を減らし、新鮮で安全な魚を消費者に届けるために、この活動をもっともっと全国に広げていきたい。それは日本の海を守ると同時に漁師たちの生活を守り、食の安全を守ることになるはずだ。

 2014年4月にスタートさせた株式会社GHIBLIには、私たちのそんな思いが詰まっている。