商品の単価を上げることの難しさ……今や、日本企業のほとんどが直面している課題ではないでしょうか。10月にスタートしたテレビドラマ『ファーストペンギン!』は、漁師が飲食店や消費者に直接魚を届けるビジネスを立ち上げるという、実話に基づくストーリー。ドラマの中で描かれているような「1箱1000円にも満たなかった魚が、1万円以上で売れる」という話も、正真正銘の実話です。『ファーストペンギン!』原作の著者で、ヒロインのモデルでもある坪内知佳さんに、ドラマの漁業監修を務める筆者が取材しました。どのようにして10倍もの価格アップを実現したのか?漁業におけるDXの理想と現実とは?そのポイントは3つありました。(おさかなコーディネーター ながさき一生)
ドラマ『ファーストペンギン!』は実話だった
1箱1000円にも満たなかった魚が1万円以上になるまで
「なんてリアルなんだ!」
テレビドラマ『ファーストペンギン!』監修のお話をいただき、台本を初めて読んだとき、漁師の家で育った私でさえそう思いました。それもそのはず。このドラマは実話に基づくものだからです。
『ファーストペンギン!』は、シングルマザーの主人公が、引越し先で経営難の漁師たちと新たなビジネスを起こして奮闘する物語。原作である坪内知佳さんの著書『ファーストペンギン シングルマザーと漁師たちが挑んだ船団丸の奇跡』(講談社)も10月に出版され、話題を呼んでいます。
坪内さんが始めた新たなビジネスとは何かというと、漁師自らがとれたての魚を箱に詰めて飲食店や消費者に直接送る「粋粋BOX」というもの。この取り組みによって、以前は1箱1000円にもならなかった魚が、今では1箱1万円以上もするようにまでなりました。
一見簡単そうに見える「粋粋BOX」。しかし実際は、水産業界特有の通例や慣習、さらに漁師の特質といった点がネックとなり、多くの苦労や工夫の末、現在に至っています。
今回、これらの工夫について、主人公のモデルであり、萩大島船団丸を率いる株式会社GHIBLI代表取締役の坪内知佳さんにお話を伺いました。