政府与党による「令和5年度税制改正大綱」で、贈与税の暦年課税制度による贈与者死亡前3年間の「相続税持ち戻し」が7年間に延長され、話題になっている。今回の大綱には、そのほかにも今後の相続税対策に関わる改正案の記述がいろいろとある。(税理士、岡野相続税理士法人 代表社員 岡野雄志)
今後の相続税対策に方向転換の可能性
「令和5年度税制改正」の行方
2022年12月16日に「令和5年度税制改正大綱」が発表されたのち、12月23日に閣議決定された「令和5年度税制改正の大綱」も公表された。相続税と贈与税に関する主な項目をピックアップしてみた。
●相続時精算課税制度への基礎控除110万円設定(24年1月1日以後適用予定)
●相続時精算課税により特定贈与者から贈与された土地または建物に対する災害控除設定(24年1月1日以後適用予定)
●相続開始前に贈与があった場合の相続税課税価格への加算期間を7年間に延長(24年1月1日以後適用予定)
●「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置」の期限を3年延長(23年4月1日以後適用予定)
●「直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置」の期限を2年延長(23年4月1日以後適用予定)
●相続税の非課税制度の対象となる法人の範囲に「福島国際研究教育機構」を加える
●医業継続に係る相続税・贈与税の納税猶予制度等について期限を3年3カ月延長
●相続税の「更正の請求」が期限(原則相続開始から5年10カ月以内)前の6カ月以内に行われた場合、他の相続人の課税価格等に異動が生じるときはその請求日から6カ月を経過する日まで加算税の賦課決定を行うことができる(23年4月1日以後に申告書の提出期限が到来する相続税について適用予定)
●相続税に係る固定資産情報の通知の電子化(令和4年度相続税法改正法の施行日より施行)
生前贈与の鉄板ともいわれる「暦年贈与」だが、現行ルールでは贈与者の死亡前3年分の贈与財産額は相続財産額に加算され、相続税の課税対象となる。その死亡前3年が7年に延長された。一方、「相続時精算課税」にも110万円の非課税枠が設けられ、政府はこれまで相続税対策に多く利用されてきた「暦年課税」より、「相続時精算課税」の利用を増やしたい意向だ。
そのため、いよいよ「相続税と贈与税の一体化」が本格始動か!?と注目を集めているが、気になるのはそれだけではない。「令和5年度税制改正大綱」の前文である基本的考え方等として述べられた、「マンションの相続税評価について」もその一つだ。