さよなら!生前贈与#9Photo:123RF

相続税額はどんな税理士でも変わらない。そう感じる人も多いかもしれないが、相続専門の税理士が見直すと、相続税の「過払い」が判明するケースは少なくない。特集『さよなら!生前贈与』(全9回)の最終回では、払い過ぎた相続税を取り戻すノウハウや、過払いが発生しやすいポイントを、相続税が専門である岡野相続税理士法人の岡野雄志代表社員に指南してもらった。

過払い「2億円」の相続税申告書も
税務署は払い過ぎても教えてくれない

「どの税理士に依頼しても、納める相続税額は変わらない」――。

 そう思い込む納税者は非常に多いだろう。確かに、相続した財産が全て現金ならば、納める相続税額にそう違いは生じない。しかし、相続財産に「土地」が含まれていた場合は話が変わる。

 実際にわれわれの税理士法人が、「他の税理士が作成した相続税申告書」を見直したところ、8割以上の申告書で相続税の払い過ぎを見つけることができた。

 払い過ぎていた額も数万円単位の話ではない。1回の相続税の過払い額が100万~数千万円になっている相続税申告書も、延べ1500件以上確認した。中には相続税の過払いが2億円を超えた申告書もあった。

 多額の相続税が過払いになってしまう理由の多くは、相続税の申告時に、「適正な土地評価を行えていない」ことだ。恐ろしいことに、土地評価が原因で相続税を過払いしていた場合、税務署から通知は来ない。そのため、知らず知らずのうちに払わなくてもいい相続税を納めている納税者は多い。

「普段お世話になっている税理士に相続税申告を依頼している。相続税の過払いなんて発生するわけがない」

 そういった先入観は大きな落とし穴だ。過払いが発生していた相続人に、「相続税申告をどんな税理士に依頼したか」と尋ねると、半数以上が、「普段から付き合いがある税理士だ」と答える。実は、確定申告などで普段から付き合いがある税理士が、相続税申告でも信頼できるとは限らない。

 次ページでは、相続税の「過払い」が発生しやすいポイントと、過払い相続税を取り戻すためのノウハウを解説する。