職場で困っている人を見かけても、「おせっかいだったらどうしよう…」と躊躇したり、「たぶん大丈夫だろう…!」と自分に言い訳したり……。
気づかいをするときには、つい「心の壁」が現れてしまい、なかなか一歩が踏み出せないことが、あなたにもあるのではないでしょうか?
この連載では、「顧客ロイヤルティ(お客さまとの信頼関係づくり)」をベースに、ビジネスセミナーへの登壇やコミュニケーションスキルの研修講師を通して、全国200社・2万人以上のビジネスパーソンに向けて教えてきた『気づかいの壁』の著者、川原礼子さんが、「気がつくだけの人」で終わらず、「気がきく人」に変われる、とっておきのコツをご紹介します。
「場の空気を変える人」の共通点
大人数に向かって話しかけるときは、つい恐縮してしまいますよね。
社歴が長くなってくると、向き不向きにかかわらず与えられる役割の1つに、会議の進行役やファシリテーターがあります。
会議の冒頭は、ドキドキする最初の関門です。1人が一言を必ず発する「アイスブレイクタイム」を設ける手もありますが、人数が多い会議では難しいですよね。
静まり返った会議室でスタートを切るとき、何か気の利いたことが言えないかと、悩むのではないでしょうか。
「静まり返った空気を瞬時に変える」という達人たちを観察すると、ある共通のルールが見出せます。
それは「ありがとう」の頻度が高くなるということです。
「え、そんなことで?」と思うかもしれませんが、試しにこれを「すみません」に置き換えてみると、その差がわかります。
どうぞ、声に出して読んでみてください。
「今から月例会議をはじめます。
みなさん、お忙しい中、朝から集まっていただき、すみません」
「〇〇さん、お休みから復帰されましたね。
たいへんな中、参加していただいてすみません」
これではまるで、自分が悪いことをしていたり、相手が迷惑に思っていることが前提になっていたりするように聞こえます。
でも、内向的な人は本当に「すみません」の回数が多いのですよね。
とっさの「すみません」を打ち消そう
ちょうどいい気づかいをするためには、「すみません」を「ありがとう」に替えるだけでいいのです。これだけで、ガラッと印象が変わります。
「今から月例会議をはじめます。
みなさん、お忙しい中、朝から集まっていただき、ありがとうございます」
「〇〇さん、お休みから復帰されましたね。
たいへんな中、参加していただいてありがとうございます」
と言い換えると、空気がプラスに変わるのを感じると思います。
この場面に限らず、日本人は「すみません」を使う回数が多すぎます。
多くのシチュエーションで「すみません」は「ありがとう」に置き換えることができます。であれば、意識して「ありがとう」のほうを多用しましょう。
口グセで「すみません」が出た後でも、「ありがとう」を付け足して打ち消すようにしてみてください。
それだけで簡単に好印象に変わります。
川原礼子(かわはら・れいこ)
株式会社シーストーリーズ 代表取締役。
元・株式会社リクルートCS推進室教育チームリーダー。
高校卒業後、カリフォルニア州College of Marinに留学。その後、米国で永住権を取得し、カリフォルニア州バークレー・コンコードで寿司店の女将を8年経験。
2005年、株式会社リクルート入社。CS推進室でクレーム対応を中心に電話・メール対応、責任者対応を経験後、教育チームリーダーを歴任。年間100回を超える社員研修および取引先向けの研修・セミナー登壇を経験後独立。株式会社シーストーリーズ(C-Stories)を設立し、クチコミとご紹介だけで情報サービス会社・旅行会社などと年間契約を結ぶほか、食品会社・教育サービス会社・IT企業・旅館など、多業種にわたるリピーター企業を中心に“関係性構築”を目的とした顧客コミュニケーション指導およびリーダー・社内トレーナーの育成に従事。コンサルタント・講師として活動中。『気づかいの壁』(ダイヤモンド社)が初の著書となる。