最近ちまたではタイムパフォーマンス、通称タイパ(かけた時間に対する効果、かけた時間に対する満足度)と言われる言葉もトレンドのワードとなりつつあります。しかし、情報革命により現代人が1日に受け取る情報量は、平安時代の一生分で江戸時代の1年分というデータも出るなど、気を抜くと自分の人生とは関係のない情報に振り回されて人生が終わってしまう社会に突入しています。今回は『「丁寧」なのに仕事が速い人の習慣』(池田輝男著、幻冬舎)を一部抜粋・編集して、当たり前のように大事とされている整理整頓を行うことによりタイパを倍増させるノウハウをお届けします。(池田ピアノ運送株式会社代表取締役 池田輝男)
(1)基本にあるのは「整理・整頓」
準備についての考え方の根底には、よく製造業の生産現場で「5S」と呼ばれるものがあるように私は思っています。この「5S」とは、いわゆる業務改善の基本となる考え方で、「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「しつけ」と、「S」の頭文字で始まる5つの要素です。
私からすれば、この5Sは、準備を考えるときになくてはならないものです。というよりも、これなくして準備などできません。
とはいえ、5つの中でも最も重要なのは、最初の二つ。「整理・整頓」です。あなたは「整理・整頓」という言葉の、本当の意味を知っていますか?子どものころから、両親に、あるいは学校で、繰り返し言われている「整理・整頓」ですが、その正確な意味を知っている人は、案外少ないものです。
ちなみに私がある採用セミナーへ招かれたとき、早稲田、慶應、明治、青山学院、立教、中央、法政といった有名大学の学生たちにこの質問をして、きちんと答えられた人は少数でした。
「整理・整頓」とは、次のような意味です。
整理……いるものといらないものを分け、いらないものを徹底的に捨てること
整頓……整理したものを使いやすいように、向きと線を揃えて並べること
そう聞かされると、「整理・整頓をしなさい」と言われたとき、正確な意味での整理・整頓をしている人は、かなり少なくなるのではないかと思います。いくら仕事道具をキレイに並べていても、その中に不要なものが混じっていたら、これは「整理されている」とは言えません。
同時に、確かに不要なものがなくなっていても、「いざ必要」という際に、取り出しにくいような順序や配置になっていたら、「整頓ができている」とは言えないわけです。
さらに「5S」というのは、先ほどの順序が優先順位も踏まえていますから、いくら「清掃」をして、「清潔」にしていても、不要なものがそのままに放置されていて、使いにくく並んでいたら、それは「キレイになっている」とは言えない。ましてや「しつけ」など、遠い先の話になってしまいます。
実際、「丁寧な仕事をする」ための準備を考えた場合、「整理・整頓」という仕事を機能的にし、リスクを軽減する発想が先にないと、いくら身なりを整え、清潔にしていても意味がないのです。何よりも整理・整頓は、丁寧な仕事において、優先されます。だから私の会社でも、最初に「整理・整頓」を徹底するのです。