【マーケター・西口一希】「とりあえずSNSで話題づくり」が失敗する当然の理由写真はイメージです Photo:PIXTA

マーケターとして、P&Gやロート製薬、ロクシタン、スマートニュースで多くの実績を残してきた西口一希氏。同氏が、ビジネスの現場で本当に使えるマーケティングの活用法を解説します。本稿は、西口一希氏の著書『マーケティングを学んだけれど、どう使えばいいかわからない人へ』(日本実業出版社)より、その一部を抜粋・編集したものです。

いい商品なのに、なぜ売れないのか?
価値は、お客さまが見いだすもの

 マーケティングでもっとも重要なことは「価値」をつくることです。そして、価値とは「お客さまが便益と独自性を見いだすプロダクトとの関係」といえます。では、「価値」はどうやってつくればいいのでしょうか? よく企業の広告などで「私たちは価値を創造しています」といったうたい文句が見られますが、そもそも価値は創造できるものなのでしょうか。

 結論からいうと、価値というのは企業がつくりだすものではなく、お客さまが見いだすものです。というのも、どんなプロダクトでもサービスでも、お客さま自身が「これは私にとってよいものだ(便益がある)」、そして「ほかでは手に入らない(独自性がある)」と思わなければ、価値にはならないからです。

 このように、価値とはプロダクトそのものにあるのではなく、お客さまが商品やサービスに触れて「価値がある」と認めたときにはじめて発生するものです。価値を感じる具体的なお客さまがいて、はじめてその価値が生じるのです。

 いってみればウォーホルの絵も、価値を提案し得る可能性を持っているだけです。2022年5月の時点では250億円で売れた絵も、世の中に「ウォーホルなんて古い」などという風潮が広まったら、暴落する可能性もあります。そこを勘違いして「価値をつくっているのは、われわれ企業サイドだ」と思い込むと、お客さまからどんどん離れていってしまうことになりかねません。