熊本県菊陽町に建設中の台湾積体電路製造(TSMC)新工場熊本県菊陽町に建設中の台湾積体電路製造(TSMC)新工場 Photo:PIXTA

半導体世界大手TSMCが熊本県に工場建設することで、九州が「シリコンアイランド」に復活しようとしている。TSMCのデータや米国の動きを踏まえながら、改めてその意義を考えてみた。(未来調達研究所 坂口孝則)

TSMCの工場建設で九州の半導体産業が復活

 九州が、「シリコンアイランド」として復活しようとしている。近年、半導体関連の投資が増加し、関連企業約1000社が集結。IC(集積回路)の生産は全国の4割を占める。

 周知の通り、半導体の受託生産で世界最大手である台湾積体電路製造(TSMC)が熊本県にて新工場を建設中だ(2024年末までに操業開始予定)。さらに、TSMCは日本で二つ目の工場建設を検討していることも明らかにした。早ければ25年内、熊本の近隣に設立する可能性が報じられている。実現すれば九州の半導体“熱”はさらに上昇するに違いない。

 産業界は行政と連携し、九州7県で「九州半導体人材育成等コンソーシアム」も結成。半導体人材の育成や確保を拡充していくと発表している。関連企業の誘致は過去3年で急増し、インフラ整備も急ピッチで進む。

 九州は原子力発電所が稼働しているため、安定的かつ(日本の他エリアと比較すると)安価な電力が確保できる。製造業が拠点を置く場所として比較優位性は高い。

 TSMCが日本に進出すると報じられた当初は、生産予定の半導体が最先端のものではなかったことから、疑問視する声も相次いだ。しかし、世界中で半導体不足が深刻化したこと、地政学リスクも顕在化したことで、日本政府も尽力したTSMCの工場誘致は、評価されるに至った。

 ただし、熊本では今、人材確保に苦労していると聞く。このあたりは引き続き、課題になるだろう。