半導体 最後の賭け#18Photo:REUTERS/AFLO

日本政府は2023年度以降も国内の半導体工場に巨額の補助金を投入する見通しだ。すでに22年内に、台湾積体電路製造(TSMC)の熊本工場を筆頭に、キオクシアホールディングスの四日市工場、米マイクロン・テクノロジーの広島工場の3カ所を対象に総額6170億円の投下を決めた。さらに政府は、追加で補助金4500億円を積み増しており、国内半導体工場の増産に向けて設備投資を一段と加速させている。特集『半導体 最後の賭け』の#18では、TSMCに続く巨額支援の「投下先」を予想する。(ダイヤモンド編集部 村井令二)

米マイクロン首脳が自民党議員に接近
「アジアで1兆円投資」アピールで支援引き出しへ

 2022年暮れ。東京・日比谷にある帝国ホテルに、米マイクロン・テクノロジーの社長兼最高経営責任者(CEO)であるサンジェイ・メロートラ氏と、エグゼクティブ・バイスプレジデント(グローバルオペレーション担当)のマニッシュ・バティア氏の姿があった。

 マイクロン首脳の2人は宿泊先のホテルで、自民党半導体戦略推進議員連盟の主要メンバーの政治家と朝食を共にしていたのだ。関係者によると、2人は次のような話をしたという。

「アジアで1兆円規模の設備投資を検討している。日本の広島もその有力候補だ。ついては、日本政府がどれだけ継続的にわれわれをサポートしてくれるのかどうかを知りたい」――。

 経済産業省は22年6月に、台湾積体電路製造(TSMC)の熊本工場(熊本県菊陽町)へ4760億円(総投資額は約1兆1000億円)、同年7月にキオクシアホールディングスの四日市工場(三重県四日市市)へ929億円(同2788億円)の補助金を決定した。

 これに続いて、同年9月には、マイクロン広島工場(広島県東広島市)にも465億円(同1394億円)の助成を決めている。この上で、マイクロン首脳が日本の追加支援への期待をむき出しにした理由は明白だ。日本政府からの補助金獲得を大前提にして、広島工場への追加投資計画を策定するということだろう。

 22年内にマイクロンは米国でも半導体分野への補助金を盛り込んだ「CHIPS・科学法」の成立を受けて、アイダホ州の本社地区やニューヨーク州北部地区で工場を新設する計画を表明した。このように半導体メーカーにとって、各国政府による補助金は、投資決定における重要な判断材料になっているのだ。

 経産省は21年度補正予算で先端半導体の設備投資の補助金として6170億円を計上し、22年内にTSMC、キオクシア、マイクロンの3件で使い切った。さらに22年度第2次補正予算では、追加支援の原資として4500億円を新たに獲得している。

 この補助金4500億円の使い道はどうなりそうなのか。次ページでは、投下先となる国内工場候補を大胆に予想してみよう。マイクロン首脳の動きからも分かるように、国内外の半導体メーカーの間で巨額マネーを巡る駆け引きが激化している。