日本企業の半導体不足はいったい何が原因なのか。半導体関係者の数十人に、日本が「買い負け」した理由について質問してきた。話を聞けば聞くほど、単純な理由に集約できた。かつその理由は、日本企業が抱える慢性的な課題というか、克服し難い理由のように思われた。(未来調達研究所 経営コンサルタント 坂口孝則)
自動車各社の半導体不足問題が続く
日本の半導体不足、真の原因は?
トヨタ自動車の高級車ブランド「レクサス」が、半導体不足の影響で受注を制限せざるを得ない状況が続いているそうだ。また、ホンダは埼玉県の寄居工場で減産し、ダイハツ工業は滋賀工場の稼働を一時停止するという。どちらも半導体不足が理由だ。
「半導体不足」という言葉を見聞きするようになって久しいが、2023年に入ってもなお、日本の製造業が半導体不足に苦労していることは、ある種のショックである。パソコンや携帯電話への半導体供給は緩和したといわれている一方、複数の自動車メーカーが生産を減少させるなど、いまだ影響は甚大だ。
もっと不幸なのは、中小・零細企業だ。大企業ではないため、ほとんど報じられていないが、中小・零細企業もまた、半導体入手困難が長く続いている。自動車関連をはじめ、その他の産業もまだ慢性的な不足といえる。
筆者はサプライチェーンの現場でコンサルティングに従業しており、肌感覚でいえば、供給は改善してきている。しかし、それは例えればマイナス100がマイナス60くらいに向上しただけであって、平時に比べるとまだまだ悪い。この1年ほど、日本企業の半導体不足はいったい何が原因なのか、ずっと考えてきた。
もっとも、世界中の企業が半導体不足だったわけで、日本「だけ」の問題ではない。ただ、日本以外の国の企業は、日本よりもまだマシだと感じるのだ。
この疑問を解消しようと、半導体関係者の数十人にヒアリングを重ねた。製造業の調達・サプライチェーン担当者や統括役員だけではなく、半導体商社や半導体メーカーなどに、日本が「買い負け」した理由について質問してきた。
調達できなかった側は、「半導体商社が悪かった」と語る。「動きが遅かったので半導体を供給してくれなかった」と。それも一理あるだろう。しかし、半導体商社側からすると、違った事実が見えるという。
本来であれば、経済安全保障や地政学といった高尚な理由をここに書きたかった。ところが、半導体関係者から話を聞けば聞くほど、単純な理由に集約できた。かつその理由は、日本企業が抱える慢性的な課題というか、克服し難い理由のように思われた。