いよいよ日本の半導体再興を目指す国策会社、ラピダスが始動した。出資者には、トヨタ自動車やソニーグループ、NTTなど日本を代表する企業8社が名を連ねる。それでも、要請があったにもかかわらず出資を見合わせた企業や、そもそも声が掛からなかった企業もある。特集『半導体 最後の賭け』の#10では、日立製作所、富士通、ルネサスエレクトロニクスなどの企業が国策プロジェクトと距離を置いた理由を明らかにする。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)
レガシー半導体メーカーに
国策参加の「お誘い」がなかった残念な裏事情
まさに「そうそうたる顔触れ」というしかない。世界最先端の半導体の国産化を目指す国策会社、ラピダスの出資者のことだ。株主リストには、製造業からトヨタ自動車、デンソー、ソニーグループ、キオクシア、NECが、通信からは日本電信電話(NTT)、ソフトバンクが、さらにメガバンクの三菱UFJ銀行が名を連ねる。この8社がこぞって出資するような「有望企業」は後にも先にも出てこないのではないだろうか。
その一方で、出資者の座組みには素朴な疑問が湧いてくる。ラピダスに出資した元世界最大手のレガシー半導体メーカーはNECだけで、同様にかつて世界の半導体産業を牛耳っていた東芝、日立製作所、富士通、三菱電機は資本参加を見送っているのだ。
NEC、日立、三菱電機を出身母体とする車載半導体大手のルネサスエレクトロニクスもラピダスとは一線を引いている。
実は、これら「ラピダス不参加組」には、出資を見合わせるに足る“もっともな”理由がある。次ページでは、あえてラピダスと距離を置いた不参加組の思惑を明らかにしていこう。