日本の家計金融資産は2,000兆円超に及ぶものの、半分以上は預貯金であり、「貯蓄から資産形成へ」が進んでいるとは言い難い。このような状況を背景に、2022年に公表された「資産所得倍増プラン」や金融審議会・顧客本位タスクフォースの「中間報告」では、NISA(少額投資非課税制度)の拡充や金融経済教育の推進などと併せて、新設される「中立性を有するアドバイザー」(認定アドバイザー)をリスト化・公表するなどの方針が示された。本稿では、認定アドバイザーの概要について、英国における類似の事例も交えつつ紹介したい。
認定アドバイザーが必要とされる背景
わが国では、「貯蓄から資産形成へ」が進んでいるとは言い難い。投資未経験者が有価証券投資に踏み込めない理由として、投資に関する知識不足や不安が挙げられる。その対処法としては、(1)投資未経験者の知識を深めるための金融経済教育の実施、(2)知識不足や不安を和らげるためのアドバイス提供──などが考えられる。
(2)については、金融商品を販売する金融事業者などのアドバイスを活用することも有益だろう。一方で、金融審議会市場制度ワーキング・グループの下に設置された顧客本位タスクフォースの中間報告は、「特定の金融事業者や金融商品に偏ったアドバイスが行われているケースが見られる」といった課題を指摘している。
そこで、良質なアドバイスをより幅広く提供するための方策の一つとして、特定の金融事業者や金融商品に偏らないアドバイスを提供できる環境整備が必要との声が上がった。そのため、新しい資本主義実現会議や顧客本位タスクフォースで、一定の中立性を有するアドバイザー(認定アドバイザー)の認定や普及に向けた議論が行われてきた。