日本では「自由に生きてはいけない」

 さて、いろいろ並べたが、気になるのは、こういう日本独特のハラスメント教育を続けると、一体どういう人間に成長をするのかではないか。

 その一端がわかるのが、平成30(2018)年度に実施された「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」だ。これは日本、韓国、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、スウェーデンという7カ国の満13歳から満29歳までの男女を対象に実施したインターネット調査である。

 その中で、「他人に迷惑をかけなければ、何をしようと個人の自由だ」という質問に対して、「そう思う」と回答をしたのは、日本以外の国では7~8割いた。しかし、日本だけは42.2%しかいなかった。つまり、日本の若者は「他人に迷惑がかからなくても自由に生きてはいけない」と考えているのだ。

 なぜ日本の若者だけがこんなにも「自分を殺す」という傾向があるのかというのは、国民性などというふわっとした言葉では片付けられない。やはり幼い頃からのハラスメント教育によって、大人たちから「いいか、子どもだからって調子に乗るなよ。みんなと同じが一番だから、自由勝手に生きようなんて大それたことをするな」と繰り返し叩き込まれているからではないのか。

 いずれにせよ、日本の子どもたちが学校や家庭で、かなり生きづらい環境にいるということは、自殺、いじめ、不登校の多さからも明らかだ。

 父親にボコボコに殴られた子どもを保護した後、「やっぱりパパと一緒が幸せだよね」なんて感じで地獄に送り返して死に至らしめるような児童虐待の事件が多いことからもわかるように、日本では欧米と違って、「子どもの人権」は尊重されていない。日本は「親権」が強いので、まだ未成年者は「親の付属物」のような扱いなのだ。

 まずは諸外国のように、子どもを一人の人間として扱って、子どもの幸せを実現する。そういう当たり前のことができずに、「子どもを増やせ」もへったくれもないではないか。

(ノンフィクションライター 窪田順生)