「1日3食では、どうしても糖質オーバーになる」「やせるためには糖質制限が必要」…。しかし、本当にそうなのか? 自己流の糖質制限でかえって健康を害する人が増えている。若くて健康体の人であれば、糖質を気にしすぎる必要はない。むしろ健康のためには適度な脂肪が必要であるなど、健康の新常識を提案する『ケトン食の名医が教える 糖質制限はやらなくていい』(萩原圭祐著、ダイヤモンド社)。同書から一部抜粋・加筆してお届けする本連載では、病気にならない、老けない、寿命を延ばす食事や生活習慣などについて、「ケトン食療法」の名医がわかりやすく解説する。

【名医が教える】体脂肪率は健康とどの程度、関係があるのか?Photo: Adobe Stock

体脂肪率が下がっても、健康には直結しない

 今まで、脂肪はダイエットをして除かないといけない、不要なものだと見なされてきました。

 実際に「肉体改造」のようなことを始めるアスリートも多くいます。体脂肪率が数%の状態を目指して、脂肪を燃焼させることが、好成績につながると考えている人も多いと思います。

 しかし、ここまで本連載を読まれたみなさんなら、もうおわかりですよね。

 脂肪は人間が生きる上で欠かせないものと言ったほうが正しい表現になります。

 あとで詳しく説明しますが、体に様々なよい働きをしてくれるケトン体をつくるには、脂肪が欠かせません

 脂肪(細胞)から脂肪酸が提供され、肝臓内でケトン体がつくられることで、ヒトの体は疲労回復し、細胞も修復され、成長しているのです。

もう一つの、大事な脂肪の機能とは?

 もう一つ、脂肪の大事な機能は、「緩衝材」としての役割です。

 体の外側からの衝撃に対してダメージを受けるのを防ぐ効果があります。だから脂肪が極端に少なくなったら、あらゆるダメージをもろに骨や筋肉で受けることになってしまうため、骨折などのケガが生じやすくなります。

 だから、適正量の脂肪を保つことが大切なのです。

 実は、適正な脂肪の割合を示すデータは存在しないので、年齢に応じた適正な体重と筋肉量や筋力が維持されていれば、少し体脂肪率が高めに出ても気にする必要はないのです。

 さらに筋肉量とのバランスの問題です。そして、そのバランスは、もちろんですが、民族ごとに大きく違います。

 当然、肉食中心だった欧米人に比べ、日本人の筋肉量が少ないのは当然なのです。大切なのは、ベストなパフォーマンスが発揮できる、その人なりの筋肉と脂肪のバランスなのです。

萩原圭祐(はぎはら・けいすけ)
大阪大学大学院医学系研究科 先進融合医学共同研究講座 特任教授(常勤)、医学博士
1994年広島大学医学部医学科卒業、2004年大阪大学大学院医学系研究科博士課程修了。1994年大阪大学医学部附属病院第三内科・関連病院で内科全般を研修。2000年大学院入学後より抗IL-6レセプター抗体の臨床開発および薬効の基礎解析を行う。2006年大阪大学大学院医学系研究科呼吸器・免疫アレルギー内科助教、2011年漢方医学寄附講座准教授を経て2017年から現職。2022年京都大学教育学部特任教授兼任。現在は、先進医学と伝統医学を基にした新たな融合医学による少子超高齢社会の問題解決を目指している。
2013年より日本の基幹病院で初となる「がんケトン食療法」の臨床研究を進め、その成果を2020年に報告し国内外で反響。その方法が「癌における食事療法の開発」としてアメリカ・シンガポール・日本で特許取得。関連特許取得1件、関連特許出願6件。
日本癌治療学会、日本臨床腫瘍学会、日本臨床栄養代謝学会(JSPEN)などの学会でがんケトン食療法の発表多数。日本内科学会総合内科専門医、内科指導医。日本リウマチ学会リウマチ指導医、日本東洋医学会漢方指導医。最新刊『ケトン食の名医が教える 糖質制限はやらなくていい』がダイヤモンド社より2023年3月1日に発売になる。