「1日3食では、どうしても糖質オーバーになる」「やせるためには糖質制限が必要」…。しかし、本当にそうなのか? 自己流の糖質制限でかえって健康を害する人が増えている。若くて健康体の人であれば、糖質を気にしすぎる必要はない。むしろ健康のためには適度な脂肪が必要であるなど、健康の新常識を提案する『ケトン食の名医が教える 糖質制限はやらなくていい』(萩原圭祐著、ダイヤモンド社)。同書から一部抜粋・加筆してお届けする本連載では、病気にならない、老けない、寿命を延ばす食事や生活習慣などについて、「ケトン食療法」の名医がわかりやすく解説する。

【名医が教える】沖縄県が世界五大長寿地域から転落した、たった1つの理由Photo: Adobe Stock

健康的な生活習慣が失われつつある日本

 ここまで、様々な健康常識の問題点を説明してきましたが、現在の日本では、健康に役立っていた様々な生活習慣が失われつつあるのです。

 実際に、どうなっているのか、身近な例を挙げたいと思います。

 沖縄県は、以前は世界でも有数の長寿率を誇っていたブルーゾーンと呼ばれる地域でした。

 ブルーゾーンとは、世界五大長寿地域のことで日本の沖縄県の他、イタリアのサルディーニャ島、アメリカカリフォルニア州のロマリンダ、コスタリカのニコヤ半島とギリシャのイカリア島がそう呼ばれています。

 このことは、厚生労働省の発表する平均寿命の推移を見れば明らかです。沖縄県の平均寿命は、1985年は男女ともに1位で、文字通りブルーゾーンでした。

 ところが、10年後の1995年は男性4位、女性1位、2005年は男性25位、女性1位、2010年は男性30位、女性3位と、女性がとうとう1位から転落し、2015年では男性36位、女性7位と、驚くような結果となっています。

 さらに、2015年の都道府県別粗死亡率に至っては、悪性腫瘍(悪性新生物)に関しては、男女ともに47都道府県で最下位になっています。

 私は、沖縄が大好きなので、この結果を見ると心が痛みます。

 以前、訪れた際に、ニンジンシリシリなど、沖縄の伝統料理をみなさんが食べなくなり、法事のあとは、ファストフードを食べていると伺いました。もちろん、すべての人がそうとは限らないでしょうが、日本から健康的な生活習慣が失われつつあるようなのです。

 戦後、アメリカに占領されて、欧米型の生活習慣が入ってきた途端、生活習慣病やがんになる人が増えて、沖縄がブルーゾーンでなくなったのは、疑いようのない事実なのです。

 沖縄が長寿地域でなくなったのは2000年代以降ですが、これは結果が表れるのに時間がかかるからと考えられます。食習慣の変化は、遅れて表れるのが特徴です。つまり、影響が出始めてからでは手遅れなのです。

食習慣を変えることで、健康的で美しく、
老いない体をつくっていける

 欧米型の食習慣を見直し、食事を抜くのではなく、生理的にケトン体が出やすくなる食習慣に切り替えることで、健康的で美しく、老いない体をつくっていけるというのが、私が本書でおすすめする健康法です。

 今、私たちが開発しているがんケトン食療法は、それをそのまま一般の人たちが取り入れるには、やや難しいと思います。

 しかし、MCTオイル(中鎖脂肪酸油)などを利用し、糖質を適度に制限するプチケトン食なら、ごく普通に食べて美味しい料理になっています。

 MCTオイルは、普通にスーパーで売っていますから、誰でも簡単に利用できます。ケトン体が出やすくなる食材やメニューは、たとえば次のようなものです。

 ・牛バラ、豚バラを使った料理
 ・サバ缶、ツナ缶、サンマ、トロ、ノルウェーサーモンなどを使った魚料理
 ・アヒージョ
 ・タルタルソースを使ったフライ
 ・サーロインステーキ
 ・チーズを使った料理

 これらの料理を食べながら、3食きちんと炭水化物もとったうえで、あなたの体型や体調の管理をしていきます。

 それだけで非常に画期的で嬉しいことだとは思いませんか。

萩原圭祐(はぎはら・けいすけ)
大阪大学大学院医学系研究科 先進融合医学共同研究講座 特任教授(常勤)、医学博士
1994年広島大学医学部医学科卒業、2004年大阪大学大学院医学系研究科博士課程修了。1994年大阪大学医学部附属病院第三内科・関連病院で内科全般を研修。2000年大学院入学後より抗IL-6レセプター抗体の臨床開発および薬効の基礎解析を行う。2006年大阪大学大学院医学系研究科呼吸器・免疫アレルギー内科助教、2011年漢方医学寄附講座准教授を経て2017年から現職。2022年京都大学教育学部特任教授兼任。現在は、先進医学と伝統医学を基にした新たな融合医学による少子超高齢社会の問題解決を目指している。
2013年より日本の基幹病院で初となる「がんケトン食療法」の臨床研究を進め、その成果を2020年に報告し国内外で反響。その方法が「癌における食事療法の開発」としてアメリカ・シンガポール・日本で特許取得。関連特許取得1件、関連特許出願6件。
日本癌治療学会、日本臨床腫瘍学会、日本臨床栄養代謝学会(JSPEN)などの学会でがんケトン食療法の発表多数。日本内科学会総合内科専門医、内科指導医。日本リウマチ学会リウマチ指導医、日本東洋医学会漢方指導医。最新刊『ケトン食の名医が教える 糖質制限はやらなくていい』がダイヤモンド社より2023年3月1日に発売になる。