(1)花粉症は現代病、19世紀までは“レア”だった
花粉症の起源には諸説あって、古くは古代ギリシャの医師ヒポクラテスが花粉症と思われる病気について記録を残しているという話があります。ただ昔は、花粉症は非常に珍しい病気だったようです。
1819年にロンドンの医師ジョン・ボストックが、花粉症の研究論文を残しています。初夏にまれに起きる季節性の症状で、急性の目のかゆみが起きるとか、くしゃみが猛烈な勢いで出るなど、まさに花粉症の症状と思われる症状が記録されています。
ただ、ここで一番重要な情報は、そのような症状の人がとてもレアだったことです。ボストックはこの論文を書くための患者28人を集めるのに、9年かかったといいます。昔は、花粉症患者はほとんど存在しなかった。花粉症は現代病なのです。
(2)アレルギー症は1960年代から激増
日本で最初に花粉症として診断された症例は、1961年のことだったそうです。花粉症は花粉に対するアレルギー症状なのですが、このアレルギー症自体、世の中で急増したのは1960年代からだったそうです。
はっきりとした因果関係を立証するのは簡単ではないのですが、状況証拠的には世の中が石油中心の社会に変わった時期と一致しています。この時代、石油化学工業が発達してプラスチックなどそれまでなかったさまざまな素材が世の中に登場し、ガソリンで走る自動車も劇的にその台数を増やしました。
「花粉の中のアレルゲンが大気汚染粒子のせいで破裂して体内に入りやすいサイズになる」という研究もあります。状況証拠的には、花粉症は大気汚染との関係が深そうです。