今年は暖冬などの影響で、例年よりも早く花粉の飛散が本格化している。花粉症は生活の質を著しく下げるため、適切な対策が非常に重要だ。しかし現在、新型肺炎の影響によりマスクが品薄で、花粉飛散のピーク時に手に入るのかという心配も高まっている。そんななかで、国民の約4人に1人が患者という花粉症にどう立ち向かえばいいのか。花粉症治療の第一人者である日本医科大学付属病院耳鼻咽喉科部長の大久保公裕医師に、花粉症対策の基本と意外と多くの人が理解できていない薬の選び方について話を聞いた。(聞き手/ライター 羽根田真智)
長年花粉症に苦しんでいる人ほど
何が最もつらい症状か理解していない
――新型肺炎の影響で、マスクの品切れなどが心配されています。こうしたなかで、どのように花粉症対策を講じればいいのでしょうか。
日本医科大学付属病院耳鼻咽喉科部長・頭頸部外科教教授
日本医科大学1984年卒。日本医科大学大学院卒。専門:鼻アレルギー、慢性副鼻腔炎。
資格等:日本耳鼻咽喉科学会認定 専門医、専門研修指導医、日本アレルギー学会認定 専門医、指導医
みなさんもご存じの通り、花粉症対策の基本は、花粉をできる限り体内に取り込まないことです。そのためにマスクは必須。マスクを頻繁に取り替えられない、または手に入らない場合は、それ以外の方法を徹底するしかありません。
具体的には、「昼間など花粉の飛散が多い時間帯の外出は避ける」「帽子やメガネで花粉をシャットアウトする」「ポリエステルやナイロンなど花粉が付着しにくいツルツルした素材の衣服を着る」「外出から戻ったときは部屋に入る前に髪や衣服に付いた花粉を払い落す」「帰宅後はうがいと洗顔をする」「窓やドアは閉め、洗濯物や布団は外に干さない」「部屋では加湿器を使い、花粉が舞い上がらないようにする」などです。
その上で、適切な薬を選ぶことが重要です。「何年も花粉症に悩んでいる」「薬を飲んでも眠いだけで効かない」と訴える患者さんの大半は、適切な薬を選べていません。
――花粉症の薬はどれを選んでも効果が同じという印象があります。
それは間違った認識です。各メーカーからさまざまな花粉症の飲み薬が出ていますが、薬によって「得意とする症状」が違います。
花粉症というと、くしゃみ、鼻水、鼻詰まりが典型的な症状です。しかし患者さんによって、「くしゃみが止まらず、仕事に集中できない」「就寝中の鼻詰まりがひどく、熟睡できない」など、最もつらいと感じている症状が異なります。長年花粉症に悩んできている人ほど、実は自分が何を最もつらいと感じているのかに気づいていないこともあります。