「3人の子育てをしながらタレント活動をする小倉優子さんが、大学合格を目指す」。MBSテレビ「月曜日の蛙、大海を知る。」で始まったその企画の結末が、約400日の期間を経て、ついに発表された。結果は、第1志望の早稲田大学には合格できなかったものの、学習院女子大学補欠合格、白百合大学合格という驚きの結果だった。中学レベルの問題も解けなかった彼女を裏で支えたのが「東大カルペ・ディエム」という東大生集団だ。最近では、彼らが執筆した『東大生が教える 戦争超全史』も話題を集めている。今回は、同団体をまとめている西岡壱誠さんに、今回の受験プロジェクトの裏側を語っていただいた。

早稲田受験の小倉優子さんが、子育てしながら偏差値を爆上げできたワケ子育てをしながら早稲田受験にチャレンジした小倉優子さん(画像提供:MBS/TBS系「月曜の蛙、大海を知る。」)

中学レベルの問題も解けなかった小倉さんが持っていた“勉強の才能”とは?

 私たち「東大カルペ・ディエム」は、昨年2022年から大きなプロジェクトを実施してきました。それは、タレントの小倉優子さんの大学受験応援プログラムです。MBSテレビ「月曜日の蛙、大海を知る。」の企画で、「3人の子育てをしながらタレント活動をする小倉優子さんが、大学合格を目指す」というプロジェクトをお手伝いさせていただきました。

 現役東大生たちが様々な科目を分担しながら支援した結果、第1志望の早稲田大学には合格できなかったものの、学習院女子大学補欠合格、白百合大学合格を成し遂げることができました。

 もともと小倉優子さんは、中学レベルの問題が解けないレベルの学力でした。そこからどうやって、子育てをしながら偏差値50~60までジャンプアップすることができたのか?

 これはもちろん、小倉さんが朝5時から起きて子育てをしながら日々努力されてきたことに他なりません。しかし、それ以外にも、小倉さんにはポテンシャルがありました。それは、「ネガティブに考える性格」という才能です。

80点でも悔しがり、100点でも喜ばなかった小倉さん

 今回のプロジェクトを支援しながら感じたのは、小倉さんはあまりポジティブではなく、むしろかなりネガティブな思考をする方だということです。

 例えば、テストの点数が100点満点中60点だったとしたら、小倉さんは「60点も取れた!」と喜ばず、「60点しか取れなかった」と考えていました。

 80点取れた場合でも「20点落としてしまった」と言っていましたし、それどころか100点満点の場合も「運が良かっただけ。当てずっぽうな部分もあったので、しっかり次までに対策しないと」とおっしゃっていました。

早稲田受験の小倉優子さんが、子育てしながら偏差値を爆上げできたワケ(画像提供:MBS/TBS系「月曜の蛙、大海を知る。」)

 僕ら東大生チームは、この点を危惧していました。ポジティブシンキングのほうが勉強に向いていると考えていたからです。

 しかし、今回のプロジェクトでご相談に乗ってくれていた、教育方法学の研究を行う岡山大学准教授の中山芳一先生は、そう考えませんでした。

 中山先生は、この「ネガティブに物事を考える性格」は、上手い方向にシフトすれば武器になると考えていたのです。

悪い結果に落ち込むことも“才能”である

 確かに、見方によってはネガティブなことは「自分をストイックに追い込める」ということに他なりません。もちろん追い込み過ぎはよくないですが、このネガティブ思考が、小倉さんを合格に導いた一つの要因だったと思います。

 勉強がうまくいかないと落ち込んでしまうこともあると思います。しかし、その「落ち込んでしまう」ことは、勉強をするうえで大きな才能でもある。今回のプロジェクトを通じて、小倉さんはそれを教えてくれました。

 もし、受験や勉強でうまくいかずに悩んでしまっている人がいれば、それは決して悪いことではない。それを忘れないでほしいと思います。

東大カルペ・ディエム
現役の東大生集団。貧困家庭で週3日アルバイトをしながら合格した東大生や地方公立高校で東大模試1位になった東大生など、多くの「逆転合格」をした現役東大生が集い、全国複数の学校でワークショップや講演会を実施している。年間1000人以上の生徒に学習指導を行う。著書に『東大生が教える戦争超全史』(ダイヤモンド社)などがある。