「からだの脳」は、脳幹や間脳、小脳、扁桃体などにあたる部分で、人が自然界で生きるのに欠かせない機能を担っています。生きるのに欠かせない機能とは、たとえば“呼吸・体温調整・体を動かすこと”、“起きることと寝ること”、“食べること”、“感情を生むこと”などです。

 次に成長する「おりこうさん脳」は大脳と小脳のことを指します。 “言葉を使う能力”、“計算・記憶に関する力”、“知識を蓄え、それを使って考える力”、“手指を動かす力”などが主な機能です。

 最後の「こころの脳」は、前頭葉(脳の前側の部分)にあたります。主な機能は、想像力を働かせること・判断すること・感情のコントロールをすること、人を思いやって行動することなど、まさに「人らしい能力」をつかさどる部位です。“感情や衝動を抑え、じっくり考える力”や“論理的思考力”、“コミュニケーションをスムーズにとる力”などのことですね。

脳の成長バランスが崩れると「発達障害もどき」に

 それぞれの脳には盛んに発達する時期があります。生きるのに一番大切な「からだの脳」は0~5歳の間に、「おりこうさん脳」は1~18歳くらいまでに、最後に発達していく「こころの脳」は10~15歳にかけてつくられ、18歳前後まで発達し続けます。

 よりイメージしやすくするため、脳の発達を「家づくり」にたとえるならば、家全体を支える1階が、「からだの脳」です。その上に乗る2階は「おりこうさん脳」。1階と2階をつなぐ階段の役割を果たすのが、「こころの脳」といった具合です。

 さて、ここで一つ気をつけてほしいのが発達する順番です。

 たとえば、「からだの脳」が盛んに育つ時期に早期教育などで、「おりこうさん脳」ばかり刺激すると、土台がうまく育たないことがあります。土台がしっかりしていないと、バランスが崩れやすく、将来何かあったときに家全体が倒れてしまうことも。つまり、「からだの脳」がしっかり育っていないと、脳全体のバランスが崩れることがあるのです。

 脳のバランスが崩れた結果、「落ち着きがない」「集団行動ができない」「ミスや忘れ物が多い」などの行動が出たり、学校生活などがうまくいかなくなることは多々あります。