池上彰が驚いた「ラーメン&餃子で5400円」、米国の経済・宗教・多様性の今をレポート写真はイメージです Photo:PIXTA

ラーメンと餃子で5400円のニューヨーク、スターバックスが17時半に閉まる中西部のカンザス――。多くの移民を受け入れ、多様な価値観が渦巻くアメリカを、ジャーナリストの池上彰と増田ユリヤが対談形式で紹介します。

※本稿は、池上 彰,増田ユリヤ『歴史と宗教がわかる!世界の歩き方』(ポプラ新書)の一部を抜粋・編集したものです。

景気のよさを感じたニューヨーク

増田 2022年の秋に、2年半ぶりに取材でアメリカに行きました。池上さんは、新型コロナウイルス感染症の拡大後、はじめての海外取材ということで、渡米前からはしゃいでいましたね(笑)。ニューヨークに何日か滞在しましたが、どんな印象を持ちましたか。

池上 ものすごく景気がよかったですよね。高層ビルが次々に建っていて、夜のレストランは人であふれていました。観光客も戻っていて、MOMA(ニューヨーク近代美術館)もすごい行列でした。

増田 街ではマスクをしている人も少ないし、コロナ禍の気配はまったく感じませんでしたね。

池上 またニューヨークといえば、イエローキャブでしたが、その数が減っていて、みんなウーバーを使うようになっていました。

増田 池上さん、ウーバー呼びました?

池上 いや、アプリを入れるのが面倒で使いませんでした。ウーバー、高いんだよね?

増田 私は呼びました。朝4時にホテルまで来てもらうようにお願いしたら、ちゃんと来てくれましたよ。

 ウーバーは、乗客が運転手を評価する一方で、運転手も乗客を評価するんですよね。だから、自分の評価が低くなると、ウーバーは呼んでも来なくなります。結果的にチップをはずむことになって、ウーバーが高くなるという(笑)。

池上 現地の日本の人が、ウーバーの運転手に道を事細かに指示したら、低い評価がついて、その人がウーバーをいくら呼んでも来てもらえなくなったという話を聞きました。それでもウーバーが人気なのは、汚ないと評判のイエローキャブより車内がきれいで、確実に来てくれて便利だからでしょうか。

 また円安ということもあり、やっぱり物価が高く感じましたね。ラーメンが16ドルで餃子は12ドルでした。私がアメリカに行ったときのレート、1ドル150円で計算すると、チップふくめて5400円になりました。

 ニューヨークの時給もいまや20ドルだそうです。日本の約3倍ですが、それでも、人が来てくれないと言っていました。人件費も、お店の値段に反映されるわけですよね。

増田 州によって付加価値税が違うので、どの州で食べるかによってビッグマックセットの値段も違うのですが、ニューヨークで買ったビッグマックセットは11.2ドル、1600円ぐらいでした。日本の倍以上ですね。

リトル・ハバナでは鶏が歩いている!?

増田 フロリダにも池上さんと一緒に取材に行きましたが、マイアミ近郊のカフェでも、メニューの上に紙を貼って、値上げしていましたね。治安があまりよくないようで、店の窓に鉄格子をはめて防犯してあったので、お店の中には入らないでテイクアウトしたほうがいいかと思ったんですが、入ってみると店内は明るくきれいで、結局お店で食べたんですよね。豚肉が挟んであるキューバンサンドイッチ、素朴な味でおいしかったです。8ドルぐらいでした。

池上 フロリダはキューバからの移民が多いので、リトル・ハバナがありますよね。本当にハバナの街を思わせる雰囲気でした。

増田 キューバは、葉巻が有名ですが、リトル・ハバナにも葉巻を作っているお店がありましたね。またキューバでは鶏を放し飼いにしているようなのですが、リトル・ハバナでも鶏が普通に道路を歩いていました(笑)。

池上 マイアミビーチのすぐ近くには、フリーダムタワーもありましたね。かつてキューバのカストロ政権からの亡命者を受け入れる施設だったところです。

 フロリダは温暖なので、若い頃ビジネスで成功し、金持ちになって移り住む人が大勢います。豪邸が多く、保守的な人が多い州です。ドナルド・トランプ前大統領もこの州に住んでいます。ディズニー・ワールドがあることでも有名ですね。

カンザスではスターバックスが17時半に閉まる!?

増田 私は、アメリカ中西部のカンザスにも行ったのですが、街中に人がいなくて、取材するのが大変でした。仕事へも、子どもの学校へも、買い物へも全部車を使うので、街に人が歩いていなかったんです。

 郊外にある大型のスーパーに行けば取材ができると思ったのですが、ヒスパニック系の買い物客ばかりで、英語が通じませんでした……。

 さらに若い人たちにも取材したい、スターバックスなら若い人がいるかなと思って、スマホで検索したら、なんと17時半に閉まると出てきました。夜に食事をするところもなく、結局パンダ・エクスプレスという中華料理のテイクアウトのチェーン店で夕食を買ってホテルで食べたんですよ。

池上 僕もカンザスに行ってみたかったなあ。

増田 こんなカンザスに? どうして?

池上 子どものころに読んだ『オズの魔法使い』の主人公ドロシーが住んでいたのがカンザスなんだよね。家が竜巻に巻き込まれて飛ばされてしまって、どこかに落ちた。ドロシーが家のドアを開けたら、見たこともない世界が広がっていて「ここはカンザスじゃないみたい」と言うわけ。なにもないカンザスとは違っていたからというのが理由なんだけど、アメリカの人たちはここで笑うんです。カンザスにはなにもないという共通認識があるから。

増田 カンザスのような場所で暮らしていたら、家と職場との往復が日常で、家族がいちばん大切という価値観になるのもわかる気がしました。

 テキサスにも取材に行きましたが、テンガロンハットを頭に載せたふくよかな体形のおじさんたちがステーキハウスに入っていくのを見て、西部劇の時代からなにも変わっていないんだという印象を受けました。

池上 テンガロンハットは、カウボーイがかぶっていたんですよね。