トランプ前大統領Photo:AFP=JIJI

米国で深刻なインフレが続いている。FRB(米連邦準備制度理事会)は昨年12月14日の金融政策会合で利上げ幅を縮小したが、依然として金融引き締めに積極的だ。そんな中、「インフレの根本原因はトランプだ」との非難が出ている。その真相とは?(ジャーナリスト 池上 彰、増田ユリヤ 構成/梶原麻衣子)

中間選挙以降に求心力が低下
窮地に立つトランプ氏

増田 「2024年の大統領選挙に出馬する」と昨年11月15日に宣言したトランプ前大統領への風当たりが強まっています。

池上 本来なら共和党が中間選挙で大勝ちし、その勢いに乗って出馬宣言をしたかったのでしょうが、結果は勝ったとはいえ辛勝で、下院の議席数がわずかに上回っただけ。また、本人に出馬するつもりがあっても、共和党の党候補に選出されるかどうかは分かりません。

 共和党内には確かにトランプ信奉者もいますが、中間選挙ではトランプが熱烈に推した新人候補が何人も落選しており、支持層だけではなく、党内の求心力の低下も指摘されています。大統領選の勝算があるとは、とてもいえない状況です。

増田 共和党の苦戦、あるいは事前の予想ほどには勝てなかったのは、やはり世論を見誤った分析が多かったということでしょうね。物価上昇が米国国民の生活を直撃していましたから、それに対する不満が現政府批判につながり、民主党が負け、赤色をシンボルカラーとする共和党が圧倒的に支持を伸ばす「レッドウエーブ(赤い波)」が起きるだろう、というのが中間選挙前の見立てになったのは、そのためではないでしょうか。

FRBが今後も
利上げする可能性はある

池上 確かに物価は驚くほど高かった。私が取材のために米国に入った昨年11月上旬は、インフレの上に円安も進行していました。羽田で両替した時には手数料込みで1ドル=151円。ニューヨークでラーメンと餃子を食べたら、チップ込みで36ドル、つまり日本円にして約5400円です。

 ただ、国内の高インフレはそろそろピークを越えつつあります。FRB(米連邦準備制度理事会)のジェローム・パウエル議長は、12月14日の金融政策会合で政策金利を0.5%引き上げると決めました。これまで4会合連続で0.75%の大幅利上げに動いていましたが、利上げ幅を縮小させることになります。

 とはいえ、パウエル議長は「利上げの継続が引き続き適切になる」とし、依然として金融引き締めに積極的です。インフレを止めることが中央銀行の役割であり、景気動向は政府の施策次第だというのがFRBの考え方ですから、今後も物価上昇にブレーキがかからなければ、さらに金利を上げる可能性があります。