イギリス国旗写真はイメージです Photo:PIXTA

2016年、国民投票でイギリスのブレグジットが決定し、2020年にEUを離脱しました。その間、イギリスでは首相の交代やエリザベス女王の死去など、世界に影響を与えるできごとがありました。ジャーナリストの池上彰と増田ユリヤが、今の世界情勢のカギとなる国を対談形式で紹介します。

※本稿は、池上 彰,増田ユリヤ『歴史と宗教がわかる!世界の歩き方』(ポプラ新書)の一部を抜粋・編集したものです。

激動のイギリスを見つめ続けたエリザベス女王

増田 歴史と伝統のある国イギリス。はじめてロンドンに行き、バッキンガム宮殿で衛兵の交替式を見た時には、感激しました。王国なんて、おとぎ話の世界というイメージでしたから。

池上 イギリスは、英語の略称がUnited Kingdomです。訳すと連合王国なんですよね。その王国の君主であったエリザベス女王は、70年にわたって在位し、2022年9月8日に96歳で亡くなりました。

 25歳で即位して、イギリスのEUへの加盟から離脱(ブレグジット)まで、激動の道を歩んだイギリスを見つめ続けてきました。

増田 歴代最長で、国民に愛された女王でしたよね。ユーモアもあり、お茶目な面もありました。

池上 ロンドンオリンピックの開会式で、ジェームズ・ボンドと共演した映像で沸かせたりもしましたね。

増田 女王は、オーストラリア、ニュージーランド、カナダをはじめ14カ国の英連邦王国の君主でもあったんですよね。

池上 日本の人には、イギリスの女王がほかの国の君主でもあるということがイメージしにくいかもしれないのですが、これらの国は、もともとイギリスの植民地で、平和裏に独立しました。いまでも英連邦王国の一員で、現在はチャールズ国王が君主になったわけです。ちなみにアメリカは、独立戦争を経て独立したので、英連邦王国には入っていません。

増田 イギリスは、アメリカを「特別な関係」と位置付けていますが、女王の葬儀では、バイデン大統領よりも前に、これらの英連邦王国の首脳たちが座っていましたね。

池上 ただこれらの国でも、チャールズ国王はエリザベス女王ほどの人気はありません。女王の死去をうけ、国王を君主とする君主制ではなく、選挙で元首、いわゆる大統領を選ぶ共和制支持が勢いを増すだろうと言われています。

 実際に、ニュージーランドのアーダーン前首相は「すぐではないが、私が生きているうちに共和制になるだろう」と共和制に移行する可能性に言及しました。