苦い顔をする女性写真はイメージです Photo:PIXTA

ボストン・コンサルティング・グループやA.T.カーニー、ベイン・アンド・カンパニーで要職を歴任し、現在は立命館大学ビジネススクールで教鞭を執る山本真司氏。マネジャーが「情報でマウントを取ろうとするのは愚の愚」というが、どういうことか?※本記事は山本真司『忙しすぎるリーダーの9割が知らない チームを動かす すごい仕組み』(PHP研究所)から一部を抜粋・編集したものです。

プライドを捨て去ると、怖いものなどなくなる

 前回で紹介したように、いったんプライドを捨て去ったら、怖いものはありません。自分がその仕事に関連して知っていることも知らないことも、自分がわからなくて悩んでいることも、それらを全部、チームメンバーにぶちまけてしまいました。

 これがチーム内での「情報の共有」の第一歩になりました。私は知らず知らずのうちに、フラットな組織に不可欠な「情報の共有」を行っていたことになります。

 世の中に千里眼の万能マネジャーなんているわけがありません。必ず弱みも抱えています。すべてを本音でカミングアウトしましょう。メンバーと共同作業をするために、もちろん、わかっていることもすべて共有します。それがメンバーの教育にもなります。

情報でマウントを取ろうとするのは愚の愚

 ピラミッド型組織的な「一人プロジェクト」時代のマネジャーとして、私はこの「情報の共有」は最悪の打ち手だと思っていました。当時は「情報独占」こそが権力者にとっての大きなパワーの源泉だと思っていたからです。メンバーの知らないことを懐に入れて、小出しにし続けるだけで、それは、メンバーをひれ伏させるための大きな武器になると思っていました。

 それはたとえば、自分の部門の役員の好みや性格、過去にあった同じようなプロジェクトについての情報、他部門での成功経験、顧客について知っている深い情報などといった、ベテランマネジャーだからこそ持てる情報です。これらをメンバーと共有せずに独占することで、簡単に自分の権威を守れました。

 メンバーが提出した企画書に対して、「これでは駄目だよ。君は、あの顧客のことを全然わかっていない。あの顧客は予算を常に重視している。私は前任の○○さんに何度も言われたからわかっている。君は顧客について本当に理解しているのか?」などと、自分だけが持つ情報で、メンバーに対していわば「マウント」を取ることができたわけです。