他社との連携で
新たな市場を開拓する

「世界で一番お肉がおいしく焼ける」鋳物メーカーが生んだ調理器具が大ヒット肉好きから人気を博す「おもいのフライパン」の「頂-ITADAKI-シリーズ」。石川氏が以前、地元の県立高校の野球部の監督をしていたというつながりで対談したのをきっかけに、ブランドの公式アンバサダーを野球解説者の上原浩治氏が務める

 現在、「おもいのシリーズ」として、肉の調理に特化した十数種類のフライパンやマルチパン、鉄板をラインナップし、売り上げ累計は7万枚を達成。空前のヒット商品になった背景には、技術力と併せ考え抜かれた戦術・戦略も見逃せない。

 その一つがITを駆使したこと。まだ黎明期にあったSNSで、販売前から開発プロセスを発信し、ファンを獲得。クラウドファンディングで資金を集め、生産力アップに充てる他、得られたマーケティングデータを基に新たな顧客開拓に取り組んだ。

 二つ目が他社との連携。20年には全国の精肉店と提携した「お肉のサブスク」、22年6月には高品質の熟成フランスワインを提供する老舗フランス料理店と組んだ「ワインのサブスク」をスタート。肉やワインの定期販売と併せ、おもいのフライパンの無償レンタル付きという仕掛けで話題を呼ぶ。今年中には大手家電メーカーとコラボし、肉に特化した新たな調理器具をリリースする予定だ。

「世界で一番お肉がおいしく焼ける」鋳物メーカーが生んだ調理器具が大ヒット「鋳肌がきれい」と定評のある同社の技術力で無塗装のフライパンが誕生
●石川鋳造株式会社 事業内容/鋳物製品製造、従業員数/40人、売上高10億円(2021年度)、所在地/愛知県碧南市中松町1‐12、電話/0566‐41‐0661、URL/omo-pan.net

 三つ目が知財戦略。矢継ぎ早に商品・サービスを繰り出す同社が大事にするコンセプトが「世にないものを作る」。他社の追随に備え、フライパンにおいても意匠登録をするなど知財戦略を徹底している。

 23年内には、既に連携する精肉店や地元企業ともタッグを組み、自社敷地内にキッチンスペース、アンテナショップなどを設け、工場見学やものづくり体験ができる新たな施設を展開。地元経済への還元も見据える。型破りの鋳物メーカーのチャレンジはまだまだ続きそうだ。

(「しんきん経営情報」2023年4月号掲載、協力/碧海信用金庫