洋平さんは以前から、杜氏が代わると、酒の味が変わるのが気になっていた。16年に杜氏が退社したのを機に、自ら杜氏となり、旭鳳の味をつくると決心。不安が襲う背中をグッと押したのが、父の酒造の友人たちだ。中でも原本店の原純さんは「おまえが造れ。大丈夫、酒にはなるけ!」と励まし、指導してくれた。19年、無我夢中で醸した純米大吟醸が、フランスで開催された日本酒鑑評会で金賞を受賞。翌年も連続受賞し、21年には「泰平」が金賞に輝く。使う米は全て県産だが、純米酒の「大林千年」は自ら米栽培に参加。田んぼのある大林地区は高齢化と過疎化が進む中山間地域で、14年の集中豪雨で甚大な被害に遭った。「千年先も豊かな集落を目指そう」と他地域から若者が集まって被災田を復田。4年目に酒が仕込める量が取れ、醸した酒は町内で完売した。重責を果たす中、品質向上に励み、KB酵母のもろみから新たな酵母を分離培養し、この地でしかできない酒造りに挑む。

新日本酒紀行「旭鳳」旭鳳 純米吟醸 泰平 TAIHEI
●旭鳳酒造・広島県広島市安佐北区可部3-8-16●代表銘柄:旭鳳 純米大吟醸八反錦、旭鳳 純米 中生新千本、旭鳳 大林千年●杜氏:濱村洋平●主要な米の品種:八反錦、千本錦、雄町、中生新千本
新日本酒紀行「旭鳳」蔵の背後は高松山 Photo by Y.Y.
新日本酒紀行「旭鳳」濱村洋平さんと母の郁子さん Photo by Y.Y.