重症の円形脱毛症でも
「以前より生やせる」ように

 オルミエントの登場により「重症の円形脱毛症の人も、以前と比較すると生やすことができる」と齊藤医師が続ける。

「オルミエントは昔から関節リウマチの治療に使われていました。2年前にはアトピー性皮膚炎の患者さんにも適応が広がり、そしてついに円形脱毛症でも。サイトカインの働きや、免疫細胞による毛根への攻撃を抑える作用があります。ただしオルミエントの処方対象は脱毛範囲が頭部の50%以上など、いくつかの条件を満たす患者に限られます」(齊藤医師)

 国際的な臨床試験で、脱毛範囲50%以上の患者が9カ月間服用したところ、3分の1以上で脱毛範囲が20%以下まで改善したという。

 デメリットとしては服薬中に免疫の働きが低下し、感染症にかかりやすくなったり、心筋梗塞や脳卒中発症などの例も報告されている。また薬剤費も高額だ。30日分で約4万7000円かかる(3割負担の場合)。

 それでも患者にとっては希望の光であるに違いない。個人的体験だが10年以上前、現在高校生の娘が5歳だった頃、多発型の円形脱毛症を発症した。特に女の子であると見た目がツルツルになってしまうのは悲しい。脱毛範囲がどんどん広がっていった時期は、親の私も暗闇の中を歩いているようだったし、幼い娘も自ら頭を触り「ハゲ……」とつぶやいてしょげていたのを覚えている。当時は治療の選択肢が今ほどなかったので、現在さまざまに打つ手があることは、それだけで患者や家族の安心につながるだろう。

コロナの後遺症による脱毛でも
治療法はケースバイケース

 さて最近ではコロナの後遺症としても、脱毛が注目された。

「コロナ後遺症としての脱毛症でも人によって違うんです。一つは円形脱毛症で、この場合はもちろん円形脱毛症の治療をします。それからコロナにかかって3カ月後くらいにゴソッと毛が抜けるケース。このような時は育毛系の薬を処方したりもしますが、多くは待っていればしばらくして生えてきます。髪が病的に抜ける――脱毛症は種類を挙げればキリがないほどたくさんの要因があるんです」(同)

 最後にもう一つ取り上げたいのが、頭皮の皮膚炎による薄毛だ。