テレビ東京「ガイアの夜明け」などテレビで話題沸騰! 京都・西陣織の老舗「細尾」12代目経営者の細尾真孝さん。1200年続く伝統工芸・西陣織の織物(テキスタイル)を、ディオールやシャネル、エルメス、カルティエなど一流ブランド店の内装に展開するなど、衰退する西陣織マーケットに新風を吹き込む若き経営者だ。その取り組みは、ハーバードのケーススタディーとしても取り上げられるなど、いま世界から注目を集める元ミュージシャンという異色の経歴の持ち主。そんな細尾氏の初の著書が『日本の美意識で世界初に挑む』(ダイヤモンド社)。閉塞する今の時代に、経営者やビジネスパーソンは何を拠り所にして、どう行動すればいいのか? 同書の中にはこれからの時代を切り拓くヒントが散りばめられている。細尾氏のユニークな発想法、経営手法の一端を同書から抜粋・編集してお届けする。
「逆転の発想」で勝機を見出す
二〇二〇年から続く新型コロナウイルスの世界的な流行により、ビジネスをめぐる環境もものすごいスピードで変化しています。
飲食業やホテル産業などをはじめ、困難な壁に直面している業界や企業も多いことと思います。
ファッションなどの小売も、実店舗での販売が厳しい状況にあります。そのためECサイトなど、別の場所に販売機会を見出そうと奮闘しています。
今やあらゆるビジネスが、環境の変化にさらされています。新しい挑戦をすることなくしては生き残れない。そんな状況になっているのではないでしょうか。
もちろんきもの業界、そして細尾も例外ではありません。
しかし、三〇年で一〇分の一に縮小した西陣織マーケットの危機を打開しようと必死に取り組んできた人間として、一つお伝えできる実感があります。
それは、この危機を打開できるかどうかは、固定観念にとらわれずに、ピンチをチャンスととらえる逆転の発想ができるかどうか。
それ次第で状況は一八〇度変わってくるのではないかということです。
実際、細尾のこれまでの挑戦もそうでした。
・32センチではなく150センチ幅を織れる織機の新たに開発
・片側からは見えずに、もう片側からは木漏れ日のような光を導き入れる半透明のカーテン
どちらも最初は「そんなの無理だ」と言われました。
しかし、逆転の発想でそんな世界初に挑み、実現できたからこそ、西陣織の世界において大きな「違い」を生み出すことができたのです。
その結果、かつてない一流ブランドのニーズを呼び起こし、ラグジュアリーマーケットを開拓することに成功したのです。
(※本稿は『日本の美意識で世界初に挑む』の一部を抜粋・編集したものです)
株式会社細尾 代表取締役社長
MITメディアラボ ディレクターズフェロー、一般社団法人GO ON 代表理事
株式会社ポーラ・オルビス ホールディングス 外部技術顧問
1978年生まれ。1688年から続く西陣織の老舗、細尾12代目。大学卒業後、音楽活動を経て、大手ジュエリーメーカーに入社。退社後、フィレンツェに留学。2008年に細尾入社。西陣織の技術を活用した革新的なテキスタイルを海外に向けて展開。ディオール、シャネル、エルメス、カルティエの店舗やザ・リッツ・カールトンなどの5つ星ホテルに供給するなど、唯一無二のアートテキスタイルとして、世界のトップメゾンから高い支持を受けている。また、デヴィッド・リンチやテレジータ・フェルナンデスらアーティストとのコラボレーションも積極的に行う2012年より京都の伝統工芸を担う同世代の後継者によるプロジェクト「GO ON」を結成。国内外で伝統工芸を広める活動を行う。2019年ハーバード・ビジネス・パブリッシング「Innovating Tradition at Hosoo」のケーススタディーとして掲載。2020年「The New York Times」にて特集。テレビ東京系「ワールドビジネスサテライト」「ガイアの夜明け」でも紹介。日経ビジネス「2014年日本の主役100人」、WWD「ネクストリーダー 2019」選出。Milano Design Award2017 ベストストーリーテリング賞(イタリア)、iF Design Award 2021(ドイツ)、Red Dot Design Award 2021(ドイツ)受賞。2021年9月15日に初の著書『日本の美意識で世界初に挑む』を上梓。