倒産寸前の出版社が「終活ビジネス」集中で東証1部上場を果たせた理由写真はイメージです Photo:PIXTA

視野を広げるきっかけとなる書籍をビジネスパーソン向けに厳選し、ダイジェストにして配信する「SERENDIP(セレンディップ)」。この連載では、経営層・管理層の新たな発想のきっかけになる書籍を、SERENDIP編集部のチーフ・エディターである吉川清史が豊富な読書量と取材経験などからレビューします。

タワレコと「終活ビジネス」会社の
意外な共通点

 紙の書籍や雑誌、CD・DVDを扱う業態、いわゆるパッケージビジネスが苦境に立たされているのは周知の事実だろう。理由は言うまでもない。電子書籍や動画配信などデジタルコンテンツの普及だ。

特に近年はサブスクリプションが全盛で、新型コロナウイルス感染拡大もあり、リアル店舗は軒並み強風にあおられている。レンタルも例外ではなく、DVDレンタルチェーン大手TSUTAYAでも、ここ数年で閉店が増えている模様だ。

 そんな中、個人的に健闘している印象を受けるのが、CD販売大手のタワーレコードだ。公表されている情報を見る限り、コロナ禍の影響による売上減や閉店数も致命的なレベルではないようだ。他社と比べて、店舗もにぎわっているように感じる。

 タワーレコードでは、「アーティストを応援するユーザーを応援する」というモットーが、各店舗で共有されているようだ。このあたりに、配信全盛時代にCDが売れる理由の一つがあるのだと思う。

 極端な言い方かもしれないが、CDを「応援グッズ」の一つとして位置付け、その販売を上記のモットーを実現するための「手段」として捉えているのではないか。

 このように「顧客が何を求めているか」を考え、顧客の要望を実現するための「手段」を捉え直す手法は、マーケティングにおいて大きな武器になる。

 CD業界と毛色は異なるが、今回レビューする書籍『倒産寸前だった鎌倉新書はなぜ東証一部上場できたのか』にも、この「手段」をどう捉えるかのヒントがあった。

 本書で取り扱うのは、仏教・供養関連の専門書を扱う小さな出版社だった鎌倉新書(1984年創業)。この企業が、葬儀・仏壇・お墓といった終活関連(ライフエンディング)関連ビジネスへの業態転換により、成功を収めるまでの過程を追ったノンフィクションである。

 著者の濱畠太(はまはた・ふとし)氏は、一般社団法人「人生100年時代協議会」の代表理事。鎌倉新書を含む東証1部上場企業4社で、マーケティング業務に18年間従事した経験を持つ人物だ。