日本の理系女子割合はOECDで最低…「理数好き」も文系を選ぶ残念な理由【おすすめ本紹介】写真はイメージです Photo:PIXTA

視野を広げるきっかけとなる書籍をビジネスパーソン向けに厳選し、ダイジェストにして配信する「SERENDIP(セレンディップ)」。この連載では、経営層・管理層の新たな発想のきっかけになる書籍を、SERENDIP編集部のチーフ・エディターである吉川清史が豊富な読書量と取材経験などからレビューします。今回取り上げるのは、OECD加盟国で最下位という、日本の理系学生における「女性比率の低さ」の原因を探り、ジェンダーバイアスの実態に迫る一冊です。

思考停止につながる
「そういうものだ」という固定観念

 今年3月24日に最終回を迎えたテレビ東京系列のドラマ『今夜すきやきだよ』は、主人公二人のウィットに富む会話や、シンプルながら魅力的な料理の映像が毎回楽しめる良作だった。

 谷口菜津子作の同名漫画を実写化したこのドラマは、性格が正反対のアラサー女性2人の共同生活を通して、現代の結婚観や友情のあり方を描いていた。特にハッとさせられたのが、トリンドル玲奈演じる主人公の一人・浅野ともこが、語気を強めて「私、『そういうもの』という言い方が大っ嫌い!」と言い放つ場面だった。

 ここで言う「そういうもの」とは、例えば「なぜ結婚したら妻が料理を作らなくてはならないのか」「なぜ結婚したら女性が姓を変えなくてはいけないのか」といった疑問に答えるときに使われるものだ。

「そういうものだからだよ」と。

 他者に恋愛感情を抱きづらいアロマンティックとして描かれるともこは、作中一貫して「そういうもの」に抵抗し続けた。

「そういうもの」とは、たいてい根拠のない固定観念を表している。もっと強い言い方をするならば「思考停止」した言葉といえる。ジェンダー差別にもつながりかねない思考や行動を問題視し、悪習を改めないまま残すことになるからだ。

 こうした思考停止が、学問やビジネスの場面でもイノベーションの妨げになるのは言うまでもない。

 今回紹介する書籍『なぜ理系に女性が少ないのか』は、「女性は理系の学問に不向き」といった「そういうもの」、すなわち固定観念が染み付いた日本の社会風土の実態を、各種調査データや先行研究などから明らかにしている。

 そしてそれを踏まえ、高等教育機関(大学・大学院など)の理系学生における女性割合が「OECD加盟国の中で最低」である日本の現状を改善するために何をするべきかを論じている。

 著者の横山広美氏は、東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構副機構長・教授などを務めており、科学技術社会論を専門とする女性研究者である。