シリコンバレー銀行の破綻と
クレディ・スイスの経営不安
3月10日の米国のシリコンバレー銀行(SVB)の経営破綻と、3月15日のスイスのクレディ・スイスグループの経営不安は、それぞれ別要因で起きたものの、これらを契機に、銀行の財務健全性に対する不安が広がっている模様だ。2008年のリーマンショックを契機とした世界金融危機のような事象を防止・抑止しようと、各国の金融当局が緊密に連携されているようだ。
SVBの破綻の引き金となった要因の一つに、米国内のインフレ抑制を目的に繰り返された利上げが、債券価格の下落をもたらしたことが挙げられる。利上げによってSVBが投資・運用していた不動産担保証券(MBS)の価値が毀損し、それに伴う信用不安が預金流出に拍車をかけた事実が報じられている。
米国のみならず、欧州中央銀行も、インフレ率を2%まで引き下げることを目標に、3月まで6回連続で利上げを実施している。従って欧州でも、低金利時代に発行された債券の価格が、漏れなく下落していることだろう。
“金余り”と呼ばれる低預貸率を背景に膨らんだ余裕資金の運用を巡り、邦銀は、かねて投資先に悩んできた。2016年2月のマイナス金利政策導入から既に7年が経過し、利ざやを求めて外国債券(外債)などに投資した残高が、既に相当額に積み上がってもいる。
短期の預金流出によって経営破綻したSVBの預金者に占める法人比率は高く、個人預金比率の高い邦銀の調達構造とは異なる。わが国では個人の預金保険制度への認知度をはじめとする金融リテラシーも総じて高く、短期的には、信用不安を背景とした取り付け騒ぎは発生しないだろう。