静岡県に本社を置く食品メーカー、カメヤ食品。従業員100人(社員40人・パート60人)の小さな企業は、実は海外事業に強みを持つ。伊豆産のわさびを使用した「ふりかけ」や「おろしわさび」が海外で人気を獲得し、EU・北米・韓国・中国などへの展開に成功しているのだ。かつては採算が取れず、海外事業から「無念の撤退」を余儀なくされた同社は、そこからいかにして再挑戦を果たしたのか。(ルポライター 吉村克己)
「わさびふりかけ」に「おろしわさび」…
伊豆産のわさびを海外展開
静岡県のわさび栽培は生産量、栽培面積、産出額のいずれも日本一で、特に産出額は全国シェアの7~8割を占める。中でも伊豆地方は、天城山の豊富な水のおかげで良質なわさびが取れる名産地として知られている。
この天城地区に1ヘクタールのわさび農園を持つカメヤ食品は、伊豆わさびにこだわった加工食品を生産し、全国のスーパーマーケットなどに卸している。チューブ入りのおろしわさび、わさびふりかけ、わさびドレッシング、わさび塩などが売れ筋だ。
また、観光客向けの卸売業(観光卸)も手掛けており、直営店(7店舗)や土産物店などでさまざまな商品を販売している。扱っている商品はわさび食品だけでなく、漬物、金山寺みそ、佃煮など100種に上る。
カメヤ食品はスーパーマーケット向けの卸売業(スーパー卸)も行っているが、新型コロナウイルス感染拡大の前までは、観光卸とスーパー卸の売り上げは同程度だった。それほど観光卸の支持が厚かったのだ。
「当社製品は伊豆産の原材料を極力使用し、わさび食品はすりたての辛み、香りにこだわっています。コロナ禍でインバウンドがゼロとなり、観光卸事業は大打撃を受けましたが、その分、海外輸出が大きく伸び、急場をしのぐことができました」と、社長の亀谷(かめがい)泰一(60歳)は語る。
日本特有の香辛料であるわさびだが、実は今、海外での需要が高まっている。カメヤ食品は商社などを通じて海外のスーパーなどに製品を輸出しており、2021年度の輸出額は約1億5000万円と前年度から倍増し、海外売上高比率は10%に達した。
地域別ではEUが半数を占め、次いで韓国、北米、中国となっている。商品別では業務用も含めてわさびふりかけが最も多く、次いでチューブ入りのおろしわさびだ。
社員数たった40人の食品メーカーは、なぜ海外展開に成功したのか。