■Case2「この仕事やっておいて!」

部下のやる気が一瞬でなくなる、伝え方の共通点とは?

「この仕事やっておいて!」は、上司世代であれば日々当たり前のように使っている言葉だと思いますが、部下のやる気を削ぐ言葉の代表例でもあります。

「部下に仕事を振って何が悪い?」と思われるかもしれませんが、部下からすれば、これだけではなぜその仕事をやらねばならないのかわからず、仕事に身が入りません。「ただのコマとして扱われているのでは」などと感じ、モチベーションが一気に下がってしまう人もいるでしょう。

 実際、単なる雑務だからこのような言い方になっているのでしょうが、思った通りにストレートに伝えてしまうと部下のやる気を削ぐだけでなく、信頼も損ねてしまう恐れがあります。

 こんなときは、ぜひこう伝えてみてください。

◎「原田さんには、ほかのみんなよりも早く経験を積んで成長してほしいから、この仕事にも挑戦してみてほしいんだ」

 このように言われると、誰しも嬉しくなりますよね。

「成長してほしい」というのは、伝え方の技術「相手の好きなこと」に当たります。ほかの人より成長してほしいと言われたら、たとえ面白みの薄い雑務であっても「期待されているんだから頑張ろう!」と前向きに捉えることができます。

 そして、「あなたに成長してほしいから」と伝えることで、部下はこの仕事をやる意味(=成長するため)も実感することができます。責任を持って臨もうと奮起してもらえるでしょう。

■Case3「急ぎの仕事だからすぐとりかかって!」

 部下の手が空いてそうだから急ぎの仕事をお願いしたのに、なかなか着手してくれない、なんだかモタモタしている…そんなとき、つい「急ぎなんだから、すぐとりかかってよ!」と言いたくもなりますよね。

 ただ、部下も自分なりに、仕事のダンドリや計画を立てて行動しています。自分のペースで仕事を進めていたのに急に仕事を振られたら、誰しも慌ててモタモタしてしまうでしょう。もし、今やっている仕事をキリといいところで終わらせてから着手しようと思っていた場合、頭ごなしに「急ぎなんだから!」と言われると、上司はこちらの都合を全く考えていない…と不満を覚え、やる気がなくなってしまいます。

 これも、伝え方ひとつで相手に与える印象を劇的に変えることができます。

◎「山田君は次のリーダーだと思って期待しているんだ。みんなの手本となるよう、急ぎの仕事から進めてくれないかな?」

 これも伝え方の技術「認められたい欲」を活用し、冒頭に「期待している」という気持ちを伝えています。次のリーダーだと期待されているならばとても嬉しいし、頑張ろうと奮起できるでしょう。

 そして「急ぎの仕事から進めて」という言葉には、「他の仕事も抱えているのは承知しているけれど、急ぎの仕事からやってほしい」という部下への配慮が含まれています。こちらの状況を理解したうえで急ぎの仕事をお願いされているとわかれば、上司の指示を素直に受け入れ、気持ちよく対応してくれるでしょう。