■Case5「会議の準備をして!」
会議の準備などといったいわゆる雑務は、若手の役割と決めている企業は多いことでしょう。実際、そのような雑務を通して「仕事とは何か」を肌で感じることができるので、後から振り返れば「若手のうちに雑務を経験してよかった」と感じる人が多いと思います。
ただ、その渦中にいる若手からすれば、「会議の準備をして!」と上から指示されるのは嬉しいことではありません。「雑用ばかり押し付けられて辛い」「自分は上司に雑用係と思われているのではないか」などと感じ、仕事へのやる気を失ってしまう恐れもあります。
気持ちよく会議の準備に取り組んでほしい時は、このように伝えてみてください。
◎「前回の会議の準備をしてくれたのは、鈴木さんだよね? 全て完璧にそろっていたよ、ありがとう! 今日もお願いできるかな?」
これも、伝え方の技術「認められたい欲」を使った伝え方です。
同じ雑務をやるにしても、このように部下を認め、感謝してくれる上司のいうことなら進んで聞こうと思えますし、「言われる前にやっておこう」と自主的に行動してくれる可能性もあります。「会議の準備をして!」と上から目線で当たり前のように指示する上司との差は歴然です。
全ての伝え方に共通するポイントは、言いたいことをストレートに伝えるのではなく、「相手の目線に立って、言葉にする」こと。相手の頭の中を想像して、より良い印象を与え、自然に気持ちよく動ける伝え方を考えることが重要です。
私は『伝え方が9割』という本を出していますが、こと仕事においては9割どころか「伝え方が99%」ではないかとさえ思っています。当たり前のように部下に言っていた「これ○○しておいて!」を、伝え方の技術を使って少し変えるだけで、相手に与える印象は180度変わります。部下のモチベーションが上がれば生産性も上がり、組織全体の業績も上向くと期待されます。
もし「最近、部下との関係性があまり良くないな…」と感じているならば、今回挙げたようなやる気を削ぐ伝え方をしている可能性が大。伝え方の技術をもとに少し工夫するだけで、部下のやる気が上がり、信頼関係も築けるようになるので、ぜひ上手に活用してほしいですね。
コピーライター/作詞家/上智大学非常勤講師
新入社員時代、もともと伝えることが得意でなかったにもかかわらず、コピーライターとして配属され苦しむ。連日、書いても書いても全てボツ。当時つけられたあだ名は「最もエコでないコピーライター」。ストレスにより1日3個プリンを食べる日々をすごし、激太りする。それでもプリンをやめられなかったのは、世の中で唯一、じぶんに甘かったのはプリンだったから。あるとき、伝え方には技術があることを発見。そこから伝え方だけでなく、人生ががらりと変わる。本書はその体験と、発見した技術を赤裸裸に綴ったもの。本業の広告制作では、カンヌ国際広告祭でゴールド賞を含む3年連続受賞、など国内外55のアワードに入選入賞。企業講演、学校のボランティア講演、あわせて年間70回以上。郷ひろみ・Chemistryなどの作詞家として、アルバム・オリコン1位を2度獲得。「世界一受けたい授業」「助けて!きわめびと」などテレビ出演多数。株式会社ウゴカス代表取締役。伝えベタだった自分を変えた「伝え方の技術」をシェアすることで、「日本人のコミュニケーション能力のベースアップ」を志す。
佐々木圭一公式サイト:www.ugokasu.co.jp
Twitter:@keiichisasaki