・安易な多角化
日本企業は、本業で上げた利益を本業の技術開発などに再投資していくが、米国企業の場合、買収が容易で人を集めやすいこともあって、得られた利益を他事業に投資して失敗しがちである。
・高すぎる配当性向
短期的に株主に報いる、目先のことばかりに気を使うと、長期的には株主も損をしてしまう経営に追い込まれかねない。米国企業の配当性向は高すぎて、投資に回す資金を減らし、長期的な競争力を弱めた。配当性向を“過度”に引き上げることは好ましくない。
・短期リターン志向
米国企業は政治的圧力の下で資本の自由化が行われ、株主へのリターンを求める志向が生まれた。そしてその傾向はどんどん強くなり、短期的なリターンの要求水準自体も高くなった。一方、日本においても、2008年当時でも徐々に短期リターンを求める圧力が高くなってきている。
・組織の非継続性
米国企業は、良くいえばダイナミックに変わる。悪くいえば継続性に欠ける。転職率が高く、いいかげんな引き継ぎが行われている。日本においても転職率は上がっているが、米に比べるとひどくない。安定性がある。
・品質よりも目先の利益追求
米国企業は品質改善に興味がなく、短期的な利益ばかり追い求めている。日本企業は品質改善に一生懸命取り組む。
・ものつくりの弱さ
米国企業では、ものつくりへのこだわりがなく、品質改善に努力しない。日本は、努力する。現場を担う中小企業の「ものつくり」も優秀。
・インスタント成り金主義
米国はマネーの力と個人の突出、そして厳しい競争を勝ち抜いたベンチャーを世界的なレベルに押し上げる。日本のベンチャーは経営技量の低い人が集まっていて、大きな存在にはなれない。むしろ、既存の日本企業を活性化したほうが、日本を元気にするだろう。
・社員の低コミットメント
米国企業は「チームが大切」などというが、あれはそうでないから言っている。社員を原材料費と同じようにいつでも削減できる変動費扱いをしている。上司が部下の人事権を完全に握ってしまうから、「上司の靴の底をなめる」覚悟がいる。日本企業は皆で頑張る。
・所得配分の過度の偏り
米国企業では、経営者は株主から高報酬を与えられ、株主へのリターンを確保することが役割であり、そのためには率先して社員を切り捨てても構わないという構図ができた。そして、経営トップと一般社員の所得格差がおどろくほど広がっていった。これで社会全体の心理的安全性が保たれるのかは疑問である。一方、日本では、それほどの格差は生まれていない。ただし、プロ経営者の育成が遅れた。
以上である。
これを裏返していうと、日本の経営の良さは、安易な多角化をせず本業を中心に投資し、長期的視野に立って、配当性向をそれほど上げず、投資または内部留保を行い、継続的な組織運営をもとに目先の利益よりも品質改善の努力をする。ものつくりに真剣に向き合い、ベンチャーというよりも既存企業が社会をリードする。社員は皆で会社と社会を良くするために頑張り、生み出された付加価値については、格差が広がらないように配分(分配)してきたということになる。これが一つのシステムとして機能したことで成功し、日本企業は一時期、世界からも注目される存在となったのである。
さて、現在はどうであろうか。