ハーバード大教授が指摘、グローバル化を決断できた日本企業の「CEOの共通点」写真はイメージです Photo:Nitat Termmee/gettyimages

ハーバードビジネススクールのデイビッド・J・コリス教授は、日本企業のサービス業である東京海上グループのグローバル戦略を研究する。世界的に成功している製造業に比べ、サービス業のグローバル化が遅れている理由についてコリス教授に聞いた。(聞き手/作家・コンサルタント 佐藤智恵)

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日本の製造業の成功の方程式が
サービス業には通用しない

佐藤 現在、世界市場で成功している日本企業といえばほとんどが製造業企業で、サービス企業は少ないのが現状です。なぜ、日本のサービス企業はグローバル化が遅れているのでしょうか。

コリス それはやはり日本の製造業の成功の方程式が、サービス業には通用しないからだと思います。トヨタ自動車、コマツ、ソニーなどのメーカーは、優れた品質の製品を製造して、それをほぼそのまま海外でも売るという戦略で成功してきました。もちろん一部はローカライズしていますが、基本的な仕様や構造は日本国内で売っているものと同じです。たとえばコマツのブルドーザーやトヨタの小型車は、どの国でもほぼ同じ仕様でしょう。

 一方でサービス業は、ローカルビジネスです。メーカーは物理的な製品を売りますが、サービス業は目に見えないサービスを売ります。良い製品なら、そのまま海外へもっていっても「良い」と評価してもらえますが、サービスは国や地域ごとにローカライズしなければ評価してもらえません。あのマクドナルドでさえ、国ごとに提供するメニューを変えているのです。

 ところが長年、日本市場のみでビジネスをしてきた日本企業にとって、「サービスのローカライゼーション」は非常に難易度が高いものです。日本から世界的なサービス企業が輩出されにくい背景には、こうしたローカライゼーションの障壁があるのです。